マツダ技報 2022 No.39
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 CX60の静粛性においては,車室内の音圧目標に加えて,音に関する人間研究の成果から開発指標を定めて,開発を進めた。2.1 静粛性の指標化 走行中の車内は,エンジン,タイヤ,風の音と振動,*1~8  NVH性能開発部  CX60のNVH開発では,不快な音や振動を排除しお客様に安心感を提供する静粛性目標,高揚するような感情を起こし,運転の楽しさを感じるきっかけとなるエンジンサウンド目標を定めた。本稿において,人が音を感じるメカニズムを探求し,それを具現化するための考え方とその実現手段について報告する。―78―1. はじめに2. 静粛性sense of ease by eliminating noise and vibration (2) Engine sounds target to evoke an elation and the driving pleasure. In order to accomplish these goals, we have constructed a concept for reducing the sound source and controlling the vibration transfer characteristics and air-borne noise. Through co-creation activities with all related departments, we’ve accomplished these goals.Key words:Vibration, Noise, and ride comfort, Body structure/body material, Acoustic material, Idling vibration/idling noise/acceleration noise, Road noise/pattern noiseNVH Performance Development Dept.Eiji SumidaAkira KinoshitaMasaki MouriTakuya FujitaYukifusa HattoriTetsuya MikodaVehicle Testing & Research Dept.Ryohei KaratsuTakamitsu MiyahigashiKenta MurakamiCX60のNVH開発についてNVH Development for CX60特集:MAZDA CX6013要 約 CX60の開発コンセプトは,『どんな道でも,心昂ることができる Driving Entertainment』である。このコンセプトを実現させるために,(1)不快な音や振動を排除し,お客様に安心感を提供する静粛性と,(2)高揚感を呼び起こし,運転の楽しさを感じるきっかけとなるPTサウンドに目標を置いた。この目標を達成するために,音源を低減させ,振動伝達特性や空気伝ぱ音をコントロールするための考え方を構築し,それを具体化させるための新たな構造や材料を研究するとともに,CX60に関わる全部門との共創活動を経て,この目標を実現させた。AbstractWe’ve set the concept of CX60 as “Driving Entertainment that can excite you on any road”.In order to realize this concept, We’ve set the goals, (1) quietness target on cabin to provide customers with 住田 英司*1毛利 正樹*2木下 晃*6富士田 拓也*7三小田 哲也*8村上 健太*9服部 之総*3唐津 良平*4宮東 孝光*5周囲の車や街の騒音など過酷な音環境にある。その環境下でも不要な音を排除して,同乗者全員に快適性と安心感を提供するために静粛な室内空間の開発を続けている。(1)粗粒路ロードノイズ 私たちは変化を敏感に感じ取ることができる。音も例外ではなく,音の変化で環境が変わったことを認知し,判断,行動のステップを取る。音の変化が小さいと認知できず,変化が大きすぎると過剰なストレスを発生させることになる。ストレスなく認知できる,この適値を良路から粗粒路への路面変化を代表シーンとして検討した。 この検討は通常の音圧データに加え,注意の誘引度を示す指標を,時間で変化する周波数特性に用いて仮説を立て,実車フィーリングで検証した。この結果から誘引度は200Hzの周波数帯域が支配的であることが示され,この帯域における時間軸での音圧変化量からストレスなく認知できる物理量を導出し,目標とした(Fig. 1)。*9  車両実研部

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