マツダ技報 2022 No.39
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(2)風変動感の低減 風変動感は,車両周りの風の乱れ(渦)によって発生する空力騒音が車体で遮音・吸音され,車内音として乗員に伝わったものである。特に,Aピラーやドアミラーで発生する空力騒音は乗員への寄与が高く,車室内の静粛性向上のためにはこれらの部位で発生する渦を低減する必要がある。スモール商品群では,「3つの風流れ制御コンセプト」に基づいて渦を低減する形状をデザインに反映し,空力騒音を低減した。そのコンセプトを以下に示す。➀ 沿わす: 風を車体表面に沿わし,剥離渦を抑制する。➁ 揃える: 上下左右の速度を揃え,巻込み渦を抑制する。➂ 減らす: 剥離領域への流量を低減し,渦を抑制する。 一般的には車両サイズが拡大すると音源である空力騒音は悪化する。そこでラージ商品群では,上記3つの風流れ制御コンセプトを踏襲しつつ,ドアミラーに対しては,新たに(a)入力風の制御技術と(b)揃える制御コンセプトの定量化を導入することで,車両のサイズ拡大により悪化が予想される空力騒音の改善に挑戦した。以下に詳細を述べる。(a)入力風の制御 カウルサイドに設定したフェンダーモールの形状により,ドアミラーへ向かう入力風の向きがドアミラーと正対するように,かつスピードが遅くなるように制御することで空力騒音(渦度)を低減した(Fig. 3,4)。結果として,正面視の面積がスモール商品群比1割程度大きくなったドアミラーでも同等の性能を実現した。(2)風変動感 高速走行時は,走行風や自然風の影響を受け,バサバサと変化する耳障りな音(風変動感)を感じる。CX60では,高速走行時の風変動感を抑え,快適で安心な室内空間を実現することをコンセプトとした。走行時の聴感評価点及び音圧の時間変化量と相関性が高い風洞での正対時と横風時の音圧レベル変化量を開発指標とし,その目標値を風の変化を感じにくいレベルとした。(3)静粛性を阻害しない振動性能 安心,快適な車室内空間で運転に集中できる環境を提供するため不要な振動は感じさせず,必要な振動は適切にフィードバックすることをコンセプトとし,振動知覚特性から感じないレベル,気にならないレベルを定量目標値とした。2.2 走行中の安心を感じる静粛性向上技術(1)粗粒路ロードノイズの低~中周波音のコントロール 路面変化をストレスなく認知できる音の実現のため,タイヤからサスペンションを通って車体に入ってくるエネルギー量をコントロールし,車体に入ってきたエネルギーは音になりやすい車体モードの振幅レベルをコントロールする構想とした。 エネルギーコントロールは,エネルギーの伝達経路において剛性差があると反射する特性を利用し,サスブッシュと車体取り付け部の剛性差を,反射効率を算出して目標を設定した。実現手段はアルミダイキャストの高い構造自由度を活用し,軽量高剛性な構造とした。 車体モードコントロールの一例として,トンネルが左右に倒れるモードに着目し,その寄与が高いトンネル前端の剛性を,ダッシュクロスの環状化,Frフレームとトンネルフレーム,ダッシュクロスの骨格ジャンクションの結合部連続化によりコントロールすることで,ねらいの振幅レベルを実現した(Fig. 2)。―79―Change Direction and Slow Down the Flow Fender Mold Fig. 1 Time Transition of Sound Pressure LevelFig. 2 Serial Cross Section of Structure FrameworkFig. 3 Flow Streamline around Fender Mold

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