(3)PTサウンドの具体化 車内で聞こえるエンジンの音は,エンジンの振動がエンジンマウントなどのラバーを含んだつなぎ部品を伝達し,フレームに代表される車体部品を経由して乗員に届く。エンジンの振動は,基本的にトルクに対してリニアに振動が変化する。このトルクに対してリニアな振動変化を,できるだけそのまま車内へ伝えるように伝達部品や車体を造り込んだ。 また,エンジンとトランスミッションの重量と締結剛性により形成される主要な振動モードがある。このモードが発生する周波数ではエンジン振動に対して,動レベルが増幅するためエンジンマウントなどのPTを支える部品の配置は可能な限り,このような振動モードの節に当たる位置に配置し,モードにより増幅した振動を車体へ伝わりにくくした。更には,トルクによって変わる車両加速度に対して,エンジンマウントなどの変位を制御し,エンジン振動の伝達に急な変曲点を作らず,リニアに車体へ伝える特性とした(Fig. 12)。―81―Fig. 9 The Target of Sound Pressure Level vs Torque 高揚感を感じる指標は,音色の変化とした。耳は外耳・中耳・内耳の3部位から成り,内耳には蝸牛と呼ばれる部位がある。蝸牛内にある基底膜が反応した後,聴覚系はある周波数ごとに信号を振り分ける。ここには,聴覚フィルターと呼ばれる中心周波数の異なる帯域フィルター群がある。すなわち人間の聴覚は24個のフィルター群として,モデル化できる。その帯域幅は臨界帯域幅と呼ばれ,中心周波数が500Hz以下の帯域では約100Hz程度の幅で一定,500Hz以上では周波数とともに,その幅は増加していく。この聴覚フィルターの働きにより,聞いている音にどういった周波数の音が含まれているのかがわかる。 この1つの聴覚フィルターに2つ以上の音が存在するときに音は干渉した音に聞こえ,音が別々の聴覚フィルターにある時は澄んだ和音に聞こえる。PTサウンドでこの干渉音が発生すると,ゴロゴロといった音に聞こえる。 ドライバーが意をもって加速する際,和音から干渉音へ音色の変化させることで,操作に対して車からの反応の変化がはっきりと感じ取れ,クルマとの一体感が増し高揚感につながると考えた。従って,高揚感を感じる音の指標は,トルクに対する干渉音の大きさとした。その目標は,意をもって加速する際に干渉音がはっきり感じ取れるように,非線形(Fig. 10,11)に変化させた。Fig. 10 Auditory Filter (2)Fig. 11 The Target of Modulate SPL vs TorqueFig. 12 Engine Mount Position and Rubber Fig. 13 Body Structure and Cavity ResonanceCharacteristics 車体感度は,車室内の空間容積などで決まる共鳴周波数と,フレームやパネルで形成される骨格の共振モードの周波数を離間して配置させることで,周波数特性としてもフラットな車体感度を実現した(Fig. 13)。 これらにより,日常の追い越しや,再加速のようなシーンでは主にリニアに伝わるPTサウンドを実現し,高速道路へ侵入するようなアクセルを深く,比較的長い時間踏み続けるようなシーンではオーディオからの補完だ
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