マツダ技報 2022 No.39
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―83―It is important to improve fuel economy for cutting CO2 emission contributing to the environment. However, it is necessary to balance the aerodynamic drag reduction and the design in the automotive product development because the drag depends on the geometry of the vehicle. To achieve this goal, the technologies of the drag reduction were developed by using the simple shaped model. We made a concept to reduce the loss in the kinetic energy of flow by controlling the flow direction at the rear end of the vehicle. By realizing this concept, the new flow control technologies that can reduce the drag by 12% compared to the previous model were developed. By applying these technologies, the CX60 achieved top level aerodynamic drag among the same class vehicles and realized the design concept.Vehicle Testing & Research Dept.Yuki IkawaYoshiatsu KugaSatoshi Okamoto1. はじめにKey words:Aerodynamics, DesignCX60の空力開発に適用した 車両後部の風向制御技術Aerodynamic Development for CX60 Adapting Flow Control Technology around Wake風流れによって生じる渦を運動エネルギー損失で表し,これに比例して空気抵抗が増大することを提案し,その確からしさを検証してきた(1)(2)(3)。その活動の中で車両周りの風流れを制御し,渦を低減すれば風流れの運動エネルギー損失を低減でき,結果としてCd値を低減できることが分かってきた。渦を低減するためには,車両表面を平滑にするなどいくつか手法はあるが,既存技術に頼った制御は車両パッケージングやデザインをはじめとした他性能に対して大きな制約となる。本稿では,他性能とCd値の両立を目指して実施した車両後方の風流れ制御技術開発と,この技術を用いたCX60の空力開発について述べる。特集:MAZDA CX6014 地球温暖化の対応策としてCO2排出削減は重要であり,マツダでも商品・生産の両面からCO2排出削減に取り組んでいる。CO2排出量は,パワーソースの性能のみならず,走行抵抗に比例して増大する。走行抵抗は主に転がり抵抗と空気抵抗に分けられる。空気抵抗は車速が高まるほど走行抵抗に対する寄与度が大きくなり,時速100kmで走行する場合には,およそ8割を占める(1)。空気抵抗はCd値に比例するため,Cd値を小さくすることが走行抵抗低減のために極めて重要である。 Cd値は車両周りの風流れによって決まる。マツダは,*1~3  車両実研部 伊川 雄希*1久我 秀功*2岡本 哲*3要 約 地球温暖化抑制に向けたCO2削減の取り組みの一つとして,燃費向上させた商品をお客様にお届けすることが私たちの使命である。CO2排出量は走行抵抗に比例して増大し,その構成要素である空気抵抗は車両形状に依存するため,商品開発においては魂動デザインと空気抵抗低減の両立が必須課題となる。私たちは,空気抵抗係数(Cd値:Drag Coe■cient)への寄与度が大きい車両後方の渦に注目し,簡易モデルを用いた風流れのメカニズム解明と風流れ制御技術開発に取り組んだ。その結果,車両後端部の風向を制御することで,空気抵抗を決定づける風流れの運動エネルギー損失を低減させるコンセプトを構築した。このコンセプトを具現化することで,従来同型比でCd値を12%低減できる新しい風流れ制御技術を確立した。これらの新技術をCX60の商品開発に適用し,高い次元で魂動デザインと両立させながら,クラストップレベルのCd値を実現させた。Abstract

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