マツダ技報 2022 No.39
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 Fig. 6にモデル後端部のX断面の風向を示す。MODEL Aでは,後端部の風向は一定の角度である。一方MODEL Bでは,斜め上を向く風がモデル後端までに生じるため後端部において風向差が発生し,Y軸方向に流れが捻じれる。そのため上面の流れが押し下げられ,急激に吹き下ろす流れとなる。以上より,後流渦は後端部の形状だけでなく,後端部に至るまでの風流れにも影響されるという仮説は正しいことが証明された。 MODEL Bにおいても,モデル上面と側面の風を後端部まで真っ直ぐに流せば,後端部での風向差が無くなり,後流の吹き下ろしが弱まるという仮説を立てた。この仮説を検証するために,丸い断面のMODEL Bに対し,四面の平面にして直線のエッジ部をもつことで,上面と側面の風を真っ直ぐ流すことをねらったMODEL Cを導き出した(Fig. 7)。 MODEL Cの流れ場をFig. 8に示す。MODEL Bに対し,MODEL Cはモデル背面上部に生じる負圧が小さい(Fig. 8(a))。そのため側面から上面に巻き込む流れが発生しない(Fig. 8(b))。また,Fig. 8(c)に示すように,側面と上面のエッジ部で発生した渦により,側面と上面の流れ―85―(a) Side view  (b) Diagonal view from behind(a) Static Pressure  (b) Streamline  (c) Flow angleFig. 8 Flow and Streamline at MODEL CFig. 9 Kinetic Energy of Flow at MODEL C(a) MODEL A      (b) MODEL BFig. 4 Streamlines at Body Surface and Wake(a) MODEL A      (b) MODEL BFig. 5 Static Pressure Distribution(a) MODEL A    (b) MODEL BFig. 6 Velocity Distribution at Cross Section XFig. 7 MODEL C Cd=0.060を真っ直ぐに制御できた。その結果,後流渦による運動エネルギー損失を低減できた(Fig. 9)。以上より,上面と側面の風を後端部まで真っ直ぐに流せば,後端部での風向差が無くなり,後流での吹き下ろしが弱まるという仮説は正しいことが証明された。 これを基に「四面の表面近傍を流れる風を真っ直ぐ流すことで,後端部での風向差をなくすこと」を後流渦による運動エネルギー損失を低減するコンセプトとした。3.3 車両全体での運動エネルギー損失低減コンセ 前節で導いたコンセプトを基に,目標とする運動エネルギー損失の低減を実現するため,車両の四面での圧力差を発生させずに速度差を低減することで後流渦の巻き込みを抑制し,後端は風向差なく流す(Fig. 10)。その風向目標を定義するため,それぞれの面の後端部における風向と運動エネルギー損失の関係を導き出した。そして,それぞれの面における風向が互いに影響し合う交互作用を考慮し,車両後方で一点収束する流れが実現できる風向を目標とした(Fig. 11)。プト

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