マツダ技報 2022 No.39
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―86―4. 制御コンセプト実現のための風流れ制御 本章では制御コンセプト実現のための風流れ制御技術について述べる。具体的には車両後端部での風向目標を実現するために,ドアミラー・タイヤ周り・床下の個別箇所において適用したコンセプトと制御技術について述べる(Fig. 12)。Fig. 10 Flow Angle around the VehicleFig. 11 Flow Angle and Kinetic EnergyFig. 12 Streamline around the Vehicle4.1 ドアミラー周りでの風流れ制御技術 車両側面では,車両近傍の風を車両後端まで真っ直ぐ流すことで,ねらいの風向を実現させる。Fig. 13にドアミラー周りの流れの模式図と,車両近傍の流線を示す。ドアミラー後方には渦が生じ(Fig. 13①),その後方で流れる車両近傍の風(Fig. 13②)がDピラー近傍で上方に曲がった(Fig. 13③)。これはドアミラーとドアミラーベースの形状によって,ドアミラー後部の渦が車両表面に近づくことで,車両表面の風が巻きあげられたため,Dピラー近傍の風向が上方に曲がったと考えられる。 Dピラー及びリアサイドスポイラー部で流れの方向の模式図をFig. 14(a)に示す。真っ直ぐ水平に流れる場合はAA断面に沿って流れる。巻き上がって流れる場合はBB断面に沿って流れる。ねらいは後端まで風を沿わせFig. 13 Door Mirror Vortex and Body Side Flow(a) Side view   (b) Sec. AA    (c)Sec. BB(a) Current flow    (b) Target flow4.2 タイヤ周りの運動エネルギー損失低減技術 タイヤ周りでは,Fig. 16に示す①~③の3つの混合渦によって運動エネルギー損失が生じる。これらの渦の大きさが不均一な場合,渦と渦の境界部で運動エネルギー損失が増え,その後方で渦が発達し,強まる。この渦は車両後端部で風向差を発生させ,後流渦による運動エネルギー損失が増大させる。そのため,タイヤ周りのFig. 16の①~③の混合渦は小さく・均一にすることが重要である。これを実現するため,タイヤ周りの各部位で渦を低減させた技術について述べる。Fig. 14 Flow Image around Rear EndFig. 15 Flow Image around Mirrorて流すこと(Fig. 14(b))である。一方,Dピラー近傍で上方に曲がる流れになると,曲率が大きな断面(Fig. 14(c))を流れる。これによりDピラー近傍の流れが減速するため剥離が前方に移動し,ねらいの風向にできない。 これを制御するため,「ドアミラー後方の渦を車両から遠ざけて車両表面の風を真っ直ぐ流すこと」をコンセプトとした。ドアミラー後方の流れをFig. 15に示す。ドアミラー後方の渦が車両に近づいている(Fig. 15(a)①)。これは,ドアミラーベースの外側の風向(Fig. 15(a)②)と内側の風向(Fig. 15(a)③)が揃わないためである。ドアミラーベースの形状で風向を揃えることで風向差を制御した(Fig. 15(b)④)。技術

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