マツダ技報2023
106/203

―98―Key words:Electronics and control, Engine control, New measuring technique, Neural NetworkMazda is taking up the challenge to evolve vehicle performance by utilizing machine learning in addition to the MBD process that we have continued to work on. What we specifically have done to solve the issues related to the sensors mounted on the engine is “virtual sensor development” that replaces sensors by predicting physical quantities with a Neural Network model. This paper introduces the process of developing the Neural Network model to predict the intake manifold temperature and the turbocharger rotational frequency of a diesel engine. Additionally, this paper shows how to deal with the situation when the input parameter falls outside the learning domain, assuming practical applications to vehicles that will be used under a wide variety of conditions.MBD Innovation Dept.PT Control System Development Dept.Kenta KobayashiKenichi MorizaneDevelopment(以下,MBD)を実践してきた(1)(Fig. 1)。 他方で,車載Electronic Control Unit(以下,車載ECU)の能力向上により自動車開発における機械学習,特にNeural Network(以下,NN)は,自動運転における画像処理,モデルの代替(2)(3),制御モデルの研究(3)等への活用が進められている。NNは非線形の複雑な現象を高い精度で再現することができ,実時間よりも高速に演算可能である(4)。これらのNNの特性に着目し,マツダではこれまで実践してきた従来型のMBDによる機能開発に加えて,NNを活用したパワートレインの更なる進化に向けた取り組みを進めている。その一例として,エンジン内部の物理量をNNで予測することで,既存のセンサーを削減する取り組みがある。マツダは電動化が進む2030年においても大半のクルマへのエンジン搭載*4  パワートレイン技術開発部 Powertrain Technology Development Dept.Yuki YanoNobuo YunokiKoshiro Wada1. はじめにVirtual Sensor Development with Neural NetworkNeural Networkを活用したバーチャルセンサー開発について論文・解説17要 約 マツダは従来から取り組んできたMBDプロセスに加えて,機械学習を活用することによるクルマの進化に挑戦している。具体的な取り組みとして,エンジンに搭載されているセンサーが抱える課題を解決するために,物理量をNeural Networkモデルで予測することで,センサーと置き換える「バーチャルセンサー開発」がある。本稿ではディーゼルエンジンのインテークマニフォールド温度とターボチャージャー回転数を予測するために,Neural Networkモデルを開発するプロセスを紹介する。また,多種多様な条件下で使用されるクルマへの適用を想定し,入力パラメーターが学習領域外に存在する場合の対応についても示す。Abstract マツダは「2050年カーボンニュートラルへの挑戦」に向けて,各国の電動化政策や規制強化の動向,お客様のニーズや受容性を踏まえたマルチソリューション戦略を実現するために,パートナー企業とともに段階的にパワートレインの電動化を進めていくことを表明している。電動化に対応した上でお客様に「走る歓び」と「優れた環境性能」を提供し続けるためにはエンジンを含めた複雑なパワートレインシステムの構成や制御の最適化を効率的に行うことが必要不可欠であり,マツダではVプロセスの左バンクにおいて流体や熱流れ,化学反応などの物理現象が数式化されたモデルを用い目指す商品性能を達成するための機能を徹底的に追求するModel Based *1~3  MBD革新部 *5  PT制御システム開発部 小林 謙太*1矢野 佑樹*2和田 幸史朗*3森実 健一*4柚木 伸夫*5

元のページ  ../index.html#106

このブックを見る