マツダ技報2023
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―100―Fig. 4 Structure of LSTM2.5 結果 学習領域内の入力データによってインマニ温度とTC回転数を予測した結果をFig. 5,6に示す。ここでNeはエンジン回転数,THinはインマニ温度,TCはTC回転数である。実測値は実線で,予測値は破線で表している。Fig. 5は145km/hまで加速する開発車両の走行データを基に机上予測した結果であり,実測と一致していることが確認できる。また,Fig. 6は開発車両の走行中にリアルタイム予測を145km/hまで複数回加速する走行において実施した結果である。開発車両によるリアルタイム予測においても遅延なく演算できていることに加え,予測精度の許容誤差であるインマニ温度±5℃以内,TC回転数±10000rpm以内を全予測期間のうち97%の領域で達成している。Fig. 5 Prediction for Training Data by LSTMFig. 7 Prediction for Outside Learning Domain by LSTM3.1 外挿対策の必要性 NNが学習領域外において精度が悪化する問題をFig. 8で説明する。青点はNNの学習領域内のデータ,赤点は学習領域外のデータを表している。実線で示すように,学習領域内のデータに対する予測(内挿)はよく合うが,学習領域外のデータに対する予測(外挿)は信頼性が失われる。これはNNが学習領域内のデータのパターンを学習し,その高い表現力で近似する一方で,学習領域外のデータのパターンは学習時に把握できないためである。Fig. 6 Real-Time Prediction by LSTM3. バーチャルセンサーの外挿対策現在までのエネルギー収支を計算する必要があり,NNはRecurrent Neural Network(以下,RNN)の採用が一般的である。ただし,RNNは長期の時系列データを処理する際の勾配消失という問題を抱えているため,今回は記憶セルの導入によって長期の過去情報を記憶可能なLong Short Term Memory(以下,LSTM)を用いた(Fig. 4)。今回のLSTMはユニット数が10で活性化関数をtanhとsigmoidとしたLSTM層が一層のモデルを使用している。また,出力層は活性化関数を恒等写像とした全結合層である。学習の設定は誤差関数として平均二乗誤差を,最適化アルゴリズムとしてAdam(5)を採用した。 次に学習領域外における予測精度を検証するために,学習データに高車速走行を加えずに,高車速走行を含む走行パターンを予測した机上検証結果をFig. 7に示す。実測の傾向はとらえているものの高車速走行時は絶対誤差が大きくなっている。一般論として,NNは学習領域外において予測精度が低下する傾向が見られる。しかし,実際の市場では多種多様な走行パターンや環境条件が存在し,全ての学習データを事前に収集することは困難である。そこで次項では,学習領域外における予測精度の信頼性を保証するための対応について紹介する。

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