(2)公開承認プロセスの定義 次に,SW管理を行う上での品質確保の取り組みとして,MIRSの機能を用いたSWリリース承認プロセスを記載する。 このプロセスは,サプライヤーから納入されたSWをリリース前にマツダ社内で確実に品質確認を行い,関係部門間で合意を得られてから,工場や市場にSWをリリースすることを保証するプロセスである。 具体的には,サプライヤーから納入されたSWを開発部門で,仕様に基づく品質確認を行った後に,SWと品質確認のエビデンスをMIRSに登録する。品質部門はMIRS上でこれらのエビデンスや品質要件を踏まえて承認を行う。この品質部門の承認によってSWが工場や市場で利用可能となる。 なお,上記エビデンスとは,SW本体,結合テスト,車両評価結果等,品質確認の根拠となるデータのことを指す。2.3 スモール商品群までの取り組みのまとめ スモール商品群までに構築していた仕組みをFig. 1に記載する。なお,Fig. 1中のOTA center のOTAとはOver The Airの略であり,無線でソフトウェア更新を行うITシステム全般を指している。―113―Fig. 1 System Overall~The Small Products~3.1 車両法規とHWSWの紐づけ管理に関する課題 UNR156では,「車種情報」「HW部品番号」「SW部品番号」に加えて,「各国/地域において車両が型式認可を取得するために順守すべき法規(以降,車両法規)」を,紐づけて管理し続ける必要がある。近年の自動車は,数多くの車種,数多くの車両法規に対し,複数の車載ECUが連携して要求事項を達成しており,紐づけ管理の品質を人手で継続して担保し続けることはリスクあった。そのため,Should Buildと呼ばれる構成管理システムを構築し,車両法規ごとにHW及びSWの紐づけ情報を管理することとした。3.2 リプロチェーン情報管理に関する課題 市場でのSW更新作業を正しく確実に実施することが求められている。マツダでは,スモール商品群からリプロチェーン情報を用いて,この要件を保証していた。 しかし,このリプロチェーン情報はECU開発者が手作業で作成しており,確認作業含めて膨大な時間を割いていた。既に,SWの種類数が増え,HWとSWの組み合わせ情報も複雑化してきていたことから,手作業でのリプロチェーン情報生成では業務品質や業務効率の視点でリスクを抱えていた。 この問題に対応するため,リプロチェーン情報をITシステムにて自動生成することとした。2.1(3)項の記載のとおり,リプロチェーン情報の管理や配信機能はRCMSに備わっていた。このRCMSに対し自動生成に必要な情報をMIDASやShould buildから取得し,自動でリプロチェーン情報を生成する機能を追加したRCMS2 (Repro Chain Management Systems 2) を開発した。3.3 トレーサビリティ情報管理に関する課題 個車単位(VIN単位)で,工場から市場におけるSW更新の実施記録を管理し,市場の車両に対し開発者の意図するSWが織り込まれていることと,不正なSW更新が実施されていないことを把握しておく必要がある。 そのため,クルマライフサイクル全体を通じてSW更新に関する履歴を,VIN単位で蓄積し,SWやHWの組み合わせが正しい状態であるかを照合するシステムを構築した。 このSW更新に関する一連の履歴情報を管理するシステムAs Latestを開発した。4. ソフトウェア管理システム構築 以上のとおり,UNR156が施行される前から,SW更新を確実に行うために必要な基盤整備を進めていた。 UNR156対応ではこれらの資産を最大限活用し,法規対応し更にSW更新を確実かつ効率的に行うために,改善すべきポイントを定めて活動したことで,現行の仕組みを大きく変えずスムーズに導入することができた。3. UNR156へ対応する上での課題と方針 UNR156に対応するに当たり,前述の業務基盤を基に法規要件に適合しつつ,継続して運用するべく以下3つの課題を抽出した。 本章では,3章へ記載した課題及び方針に対し,構築したプロセス,ITシステムの仕組みを具体的に記載する。4.1 全体像(1)関連するシステムのつながり UNR156に向けて構築したシステムの全体像としてFig. 2にて各システム間のつながりを示す。
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