マツダ技報2023
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―120―Fig. 8 Psychrometric ChartFig. 9 Comparison Before and After Humidification OperationFig. 10 Changes in Daily Electric Power Consumption and Mean Temperature of O■ce Building Air Conditioning Equipment in September 2018 and 20195. 効果の見える化湿度制御方法を開発した。具体的な内容としては,空調機には加湿器があり水を使用しているため,この加湿器を使用することで,「気化熱」を活用して空調機の吹き出し温度を下げることをねらった。しかし,加湿器はインターロックにより暖房時しか運用できない課題があったため,季節に関係なく加湿できるように改善することで解消した。更に机上で,加湿による室内の温度変化を検証した。中間期の温湿度基準24℃±1℃,50%±5%で管理するためには,過去の運用実績から空調機の吹き出し温度を21℃以下に保つ必要がある。一方,加湿器の仕様より能力を確認した結果,気化熱の利用で,約3℃温度が下がることが分かった。併せて,空気線図(Fig. 8)を用い,気化熱を利用できる範囲を検証した結果,青く囲んだ目標値の範囲で運用するには,外気は24℃が上限,その時の湿度が50%以下であれば赤い斜線,気化熱の利用が可能なエリアに入ることが明確になった。 そこで,限界値を基に気化熱利用の有無について,空調SIMで解析した結果,室内温度を基準値の24℃±1℃以内で管理可能であることが確認できた(Fig. 9)。更に各フロア複数点の温度・湿度を実測し,空調SIMとの整合性も確認した結果,外気24℃,50%までは,「気化熱」を冷房として使用可能で,これまでカン・コツに頼っていたが,誰でも同じ運用が可能となった。また,中間期の湿度も制御可能となり快適性も向上した。その結果,エネルギー使用量を前年比で電力18%,蒸気30%削減した。 このように,運用改善での空調SIMは有効であり,結果を基に管理することで,年間通じて安定した室内環境の提供が実現でき,快適性の向上と省エネの両立が可能である。 省エネ改善のPDCAサイクルを回すためには,Check(効果確認)が重要であるが,これまでの章で取り上げてきた熱源設備の省エネ取組では,定量的な効果確認が行えないためにサイクルが回らない事例が多かった。そこで,熱源設備における省エネ取組の効果を定量的に「見える化」する手法を考案した。5.1 熱源設備のエネルギー使用量の特徴,課題,対策 熱源設備でのエネルギー使用量は,運転時の外気条件(温度,湿度 等)や稼働条件(生産量,オフィスの使用時間 等)などの要因によって変動する。これまで,熱源設備の省エネ取組の評価は,前年同月比較で行っていたが,外気/稼働条件の違いが考慮できておらず,一般的に数%程度とされる省エネ取組によるエネルギー削減量を定量評価できる精度は有していなかった。そこで,前年における熱源設備のエネルギー使用量と外気/稼働条件の相関を数式化することで,これらの影響を補正し省エネ効果のみを定量評価できる指標を作成した。5.2 オフィスビル空調設備での見える化事例 Fig. 10に2018年と2019年の9月における当社オフィスビル空調設備における日ごとの電力使用量と平均気温の推移を示す。9月10日の平均気温に注目すると,2018年の23℃に対し,2019年は30℃と7℃高く,この日の電力使用量は,2018年の10MWh/日に対し,2019年は13MWh/日と約30%多い。稼働条件として平日と休日の電力使用量に着目すると,両者には3倍程度の差があり,休日の寄与は小さい。平均的な1か月間の平日数は約20日であるので,曜日の関係で平日数が1日増減した場合,月間エネルギー使用量には約5%程度の増減が生じると考えられる。

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