マツダ技報2023
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―121―Fig. 12 Comparison between September 2018 and Fig. 13 Comparison of September 2018 Energy 5.3 生産設備での見える化事例 プラスチックバンパー成型機や金型温調器などの生産に使用する熱源設備では,エネルギー使用量は生産量に大きく影響され,外気条件の影響は相対的に小さいと考えられる。そこで,以下手順でベンチマークを算出した。①2021年の月間電力使用量を月間生産量で割り,月ごとの台当たり電力使用量を算出する。② ①で求めた台当たり電力使用量に2022年の月間生産量を掛けることでベンチマークを算出する。 Fig. 14に金型温調器における2022年の月間電力使用量,ベンチマーク,4月からの累積削減電力量の推移を示す。本設備では,金型の冷却に冷却塔を用いている。省エネ取組として4月に冷却塔の薬品洗浄を,7~8月にかけて温調器熱交換器の薬品洗浄を実施した。7月頃から省エネ効果が表れ始め,年間の電力削減量は675MWhという評価結果となった。Fig. 14 Changes in Electric Power Consumption, Benchmarks, and Cumulative Reduction in Electric Power Consumption in 2022 for September 2019Consumption, Benchmarks, and September 2019 Energy ConsumptionMold Temperature ControllersFig. 11 Dependence of Power/Steam Consumption on  2019年9月は,2018年9月に比べて月間平均気温が2.6℃高く,平日数は1日多かった(Fig. 12)。単純な月間エネルギー使用量の比較では,原油換算量で12kL/月の増加であり(Fig. 13),従来の評価方法では,2019年に各種省エネ取組を行ったものの運転効率は悪化という評価結果となる。一方,ベンチマークと比較すると11kL/月の省エネ改善という結果となる。このように,前年からの外気/稼働条件の変化の影響を補正し,省エネ効果を定量的に評価することが可能になった。 また,Fig. 11に2019年度のモデル式を破線で示す。いずれの不快指数でも2018年のモデル式よりも下方に位置しており,運転効率が向上したことが分かる。Weekdays on Discomfort Index これらの条件の違いによる変動を補正するため,以下手順でベンチマークを算出する。なお,本事例のオフィスビル熱源設備では,電力と蒸気を併用している。そこで,電力使用量と蒸気使用量それぞれについて同様の分析を行う。① 2018年の1日ごとのエネルギー使用量データを平日と休日に分類する。② 1日ごとのエネルギー使用量を縦軸y,外気条件を示す物理量(最高/平均/最低気温,不快指数等)を横軸xとして散布図を描き(Fig. 11),最も良い相関を示す物理量を探す。本事例では不快指数を採用した。③ ②で描いた散布図の相関を説明できるモデル式f(x)を考える。電力,蒸気ともに不快指数が60の所で折れ曲がるV字型になっている。これを再現する式としてFig. 11内のモデル式を考えた。電力には換気設備による固定消費電力があるため,外気不快指数に依存しない定数を仮定している。また,不快指数>60の領域で運転する冷熱源機器には,成績係数が不快指数の上昇に伴い低下するという特性があるため,エネルギー使用量が非線形に増大する式を仮定した。④ 最小二乗法により,2018年の実績を最もよく再現するパラメーター(a~m)を決定する。求めたモデル式をFig. 11内に実線で示す。⑤ ④で求めた数式 f(x)に2019年の外気条件x′を代入し,ベンチマークを算出する。

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