マツダ技報2023
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 1310MPaの鋼板で440MPaの鋼板と同等の溶接性を確保するためには,加圧力を約2kN上げる必要があ る。 加圧力の増加により通電面積が大きくなると式(2)より発熱量Qが小さくなるため,それを補うために大きな消費エネルギーが必要となる。3.2 材料強度差の大きい板組適用に伴う増加 例えばAピラーのような外板とつながる部分では,外板は薄肉軟鋼板に対し,中の補強材及び内板は厚肉高張力鋼板となり,板厚比・強度比の大きな3枚重ね板組となる(Fig. 4)。高張力鋼板は一般的に高強度になるにつれ炭素含有量等が増えることにより,固有抵抗値が高くなる傾向にある。固有抵抗値の異なる材料の組合せにおいては,固有抵抗値の高い材料から発熱溶融する。従ってTable 1のような板組においては高張力鋼板の板間から発熱溶融し,拡大し軟鋼板に到達するというような溶融プロセスとなる(Fig. 5)。(1)(2) 通電面積は材料の降伏強度と,加圧力,及び電極先端形状によって変化するため,電流値,通電時間,加圧力,電極先端形状はスポット溶接の4大制御因子である。 スポット溶接継手品質は,多くの場合ナゲット径を基準に議論され,スポット溶接性については,基準となるナゲット径を取得できる電流値から,入熱過多により散り(溶融金属が飛散すること)が発生する直前の電流値までの範囲(適正電流範囲と呼ぶ)の広さで評価している。 スポット溶接は他の接合手法と比較して初期投資,ランニングコストの両面で安価で,溶接対象に対する表裏両面からの加圧により安定して品質を得られるため広く使われている(5)。2 ―124―Fig. 1 Schematic of Spot Welding ProcessQRIdtLSIdt2Fig. 3 Schematic of Noise TestFig. 4 Example of Sheet CombinationTable 1 Sheet CombinationSheet1Sheet2Sheet3Thin mild SteelThick high tensile steelThick high tensile steel440MPaの鋼板2枚組と1310MPaの鋼板2枚組を比較する。縦軸に示す力は加圧力である。通電時間は300ms,ノイズとしてFig. 3のように評価した。Fig. 2 Weldability Di■erences between Steel Grades2. スポット溶接とは3. 消費エネルギーを増加させる要因 スポット溶接は被溶接材料を水冷銅電極で挟んで加圧し,ここに大電流を流し,溶接部に生成するジュール発熱を熱源とする溶融接合方法である(4)。溶接中の通電面積が時間的に増大しながら溶接が進行する。この溶融凝固部の径をナゲット径とする(Fig. 1)。このとき生成する熱量Q [J] は,ジュールの法則に従い,抵抗値R [Ω],電流値I [A],時間t [s]によって式(1)で示すことができる。更にこの抵抗値Rは材料固有抵抗値ρ [Ω・m],通電長さL [m],通電面積S [m2]によって式(2)に置き換えることができる。 消費エネルギーが増加傾向にある主な原因として,①材料の高強度化に伴う高加圧力化と,②材料強度差の大きい板組における高電流長時間化,の2点がある。この2点について説明する。3.1 高加圧力化に伴う増加 高強度な材料では板間隙等のノイズを抑え,必要なナゲット径を得られる通電面積を得るための必要加圧力は材料の降伏強度の増加に伴い大きくなる。Fig. 2に2枚組におけるノイズを加味した適正電流範囲を示す。

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