マツダ技報2023
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 2つ目としてTable 1に示すような3枚組について説明する。ねらいとする溶融プロセスは,薄肉-厚肉間のナゲットを形成した上で,厚肉-厚肉間のナゲットを基準ナゲット径まで拡大することである。薄肉-厚肉間のナゲットを形成するために,電極近傍の発熱を促すべく,低い加圧力で通電面積を狭くする。そして厚肉-厚肉間のナゲットを基準ナゲット径まで拡大させるために高い加圧力で広い通電面積とする(Fig. 8)。―125―Fig. 5 Schematic of Spot Welding ProcessFig. 6 Relationship between Nugget Diameter and  結果として上記のような非効率な溶融プロセスとなり,不必要なエネルギー消費を招いている。4. 目指す溶融プロセスCurrentFig. 7 Schematic of Conducting Area ControlFig. 8 Schematic of Conducting Area ControlFig. 9 Welding Condition of Normal Force 本来,薄肉-厚肉のナゲットを形成するためには電極近傍の通電面積を狭くすることが有効である。一方で厚肉-厚肉間は基準ナゲット径まで拡大させるため通電面積を広くする必要がある。そのため現状,溶接品質を担保するため,高加圧力を設定し,広い通電面積を確保している。 Fig. 6に薄肉-厚肉間のナゲット径(Diameter between 1 & 2)と厚肉-厚肉間のナゲット径(Diameter between 2 & 3)の電流値との関係を示す。この結果は板間隙1.4mmを付けた1回の通電(5.39kN,500ms)での結果である。Fig. 5のような溶融プロセスとなるために薄肉-厚肉間のナゲットを作るために,厚肉-厚肉間のナゲットが過大に形成されていることが分かる。そのため,厚肉-厚肉間の散りを抑えるために更に高加圧が必要となり,薄肉-厚肉間のナゲットを形成するために,長時間高電流が必要となっている。 上記より溶接品質の安定確保と消費エネルギー削減を両立させるためのキーとして,発熱量を決める要素の一つである通電面積に注目した。従来は必要なナゲット径やノイズ等から決めた加圧力で通電面積が決まっているが,ナゲットの形成過程に合わせて通電面積を適切にコントロールすることで効率的なナゲット形成につながると考えた。そしてこの通電面積のコントロールを加圧力によって行うことを考えた。 2つの板組を事例にしてねらいのプロセスを説明する。 1つ目として厚肉高張力鋼板の2枚重ねについて説明する。溶接の序盤では低い加圧力で通電面積を狭くし通電密度を高めることにより,電流値を下げる。後半は基準ナゲット径まで拡大させるために高い加圧力で広い通電面積とする(Fig. 7)。 上記のように加圧力を変化させることで通電面積をコントロールし溶融プロセスを最適化させることを考えた。5. 多段加圧スポット溶接による理想プロセス まず加圧力を変化させることで通電面積のコントロールが可能かどうかについて,CAEにより机上評価を行った。サンプルは,板厚2.0mm,材質1180MPa非メッキの2枚組を使用し,加圧力一定の溶接(Normal Force)と多段加圧スポット溶接(Multi-step Force)で,通電面積の変化を比較した。溶接条件を以下に示す(Fig. 9,10)。実現

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