マツダ技報2023
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(1)LAQ  Tinnersurface Qinnersurface L:熱移動距離 α:内部熱伝導率 A:熱伝導面積T―131―innersurfaceinnersurfaceFig. 1 Temperature Dependence of the LIBFig. 2 Example of the LIB Temperature Di■erence 2.2 高速高精度モデル構築方法について 環境温度や,温調制御の変化に対応し,高速,かつ高精度な内部温度モデルを実現するには,式(1)で示した温度差発生メカニズムに基づき,定量的に,かつ必要最小限な構成で表現できていなければならない。そこで,まず,電池セル内部の発熱,伝熱特性を把握し,3次元解析で熱流れによる温度差発生メカニズムを解明する。次に,メカニズムを踏まえた主要な熱流れのみを抽出し,簡易的な1D伝熱等価回路に縮退することで,高速,かつ高精度モデルを実現することとした。更に,モデル化を容易化にするために,電池内部の材料特性など,詳細な材料分析が必要な情報は用いず,実験データとモデルを組み合わせた内部熱特性取得を行うこととした。本モデル作成プロセスをFig. 3に示す。初めに,発熱特性と,伝熱特性の一つである内部熱容量の同定を行う。次に,3次元モデルを構築し,内部熱流れを分析,それに基づき,1D熱等価回路に縮退し,最後に実験データと構築した等価回路を用い,残された未知パラメーターの同定を行う。これらの詳細を,3章と4章に述べ,構築したモデルの精度検証を5章に述べる。なお,本取り組みでは,車載用の角缶形状で,内部電極体は積層タイプのLIBを対象とした。Fig. 3 Process of Thermal Model Construction3.1 電池ジュール熱,分極熱発熱量 電池発熱量の式を式(2)に示す。今回対象とした発熱要素は,電子移動抵抗に伴うジュール熱,イオン移動に伴う分極熱,及びエントロピー変化熱とした。 ジュール熱,分極熱は,電気挙動を再現した等価回路モデルを用いて表現している。等価回路をFig. 4に,between Inside and Surface2. LIB内部温度管理とモデル構築方法について2.1 LIB内部温度管理とモデル構築方法について LIBの温度依存性の一例を,Fig. 1に示す。LIBの出力や,容量維持率(SOHC)はその温度によって,大幅に変化する。これは,1章で述べたように,電池セル内部の電気化学反応に伴うものである。温度が低い場合は,Liイオンの移動速度が低下するため,出力が低下する。一方,温度が高い場合は,電解液の分解速度が上がる等により劣化が促進し,容量維持率が低下する。このため,容量を維持しつつ,高出力を可能となる温度域は,例えば約10℃から40℃といったようにとても狭い範囲となる。また,電池セル内部温度(以降,内部温度)は,電池セルサイズや,内部熱特性によって,電池セル表面温度(以降,表面温度)と乖離する場合がある。その温度差は,式(1)に示すように,内部と表面間の移動熱量と,内部熱伝導率,内部寸法によって見積もることができる。本式を用いて机上計算した結果例をFig. 2に示す。ここでは,車載を想定し,電池セル底面を冷却面としている。また,発熱量を移動熱量として計算している。電流レートに応じて,温度差は拡大していくことが分かる。電流レートが2C(30分でSOC100%使用する電流値)超では,内部温度と表面温度差は10℃に到達した。このように,調温目標値は狭いことに加え,内部と表面の温度差が発生することから,その充放電能力を引き出すには内部温度の緻密な管理が必要であり,その実現のために,電池セル内部の温度推定の高精度化が求めら れる。3. 電池内部熱特性取得方法:内部表面温度差:内部表面移動熱量

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