マツダ技報2023
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 SAE No.2試験機を始めとした一般的なクラッチ単体での摩擦特性試験機は,クラッチと計測用モーターが直結されており,直接的にクラッチ伝達トルクTclと速度Vを計測することが可能である。しかし,Fig. 5に示すよう―138― ]-[ ]mpr[deepsevitaerhctuC l l0Fig. 3 Experiment EnvironmentFig. 4 Test PatternHEVが増加しており,モーター走行はエンジン走行以上に滑らかであることから,クラッチによるショック抑制機能も従来以上に高い性能が求められる。 これら機能の高性能化には,クラッチ伝達トルクの制御性向上が必要である。クラッチ伝達トルクの制御は,クラッチ押し付け力をAT内の油圧機構を用いてコントロールし,実現している。この押し付け力は所望の要求から決まるクラッチ摩擦力をクラッチの μ で除算することで導出しており,高精度な制御の実現には,正確なクラッチの μ を計算に使用する必要がある。Fig. 1 Multiple Wet Clutch0.180.170.160.150.14Fig. 2 Current State of μ Model2.2 AT実装環境下における動摩擦特性の計測手法開発 AT実装環境下における,動摩擦特性の荷重・速度・摩擦面温度依存性を明らかにするため,台形波試験を参考にする。実施する計測条件は,計測中荷重を一定とし,クラッチの速度はFig. 4に示す試験パターンとする。この計測条件は,摩擦面温度の計測を同時に行った場合,加速領域では速度変化による μ 変化が,保持領域では摩擦面温度の上昇による μ 変化が顕著となるため,複合的な μ の各種依存性の切り分けが可能となる。 tn eic iffeo c n oitc irFDrum Metal plate (Driven plate) Only µV model 0.01.0Drive plate Friction facing Hub Error Measurement Relative speed 3.02.0Time [s] 15001000500Motor 3 (Driven) Motor 1 (Drive) Clutch relative speed [rpm] Torque meter & Speed meter AT unit Max relative speed 5rpm 0 Retain 1sec Accelerate 1sec Motor 2 (Driven) Differential gear Oil temperature controller Retain 1sec Time[s]  クラッチはFig. 1に示すように,複数の湿式ペーパー摩擦材(以下,摩擦材)(1)を張り付けたドライブプレートと,金属製のプレート(以下,ドリブンプレート)を潤滑油中で摩擦させることで,トルクを伝達している。そのため,クラッチの μ は摩擦材の μ によって決まる。この摩擦材の μ は,特に荷重・滑り速度(以下,速度)・摩擦面温度によってその値が変化することが知られている(1,2)。通常,クラッチの制御に用いる μ は,自動車規格(JASOM349)の台形波試験の結果から導出する。台形波試験では設定荷重ごとの速度に対する μ 特性を計測するため,計測した μ の荷重・速度依存性は考慮できるが,温度依存性の考慮は困難である。試験結果の一例をFig. 2に示す。μ の計測値である破線に着目すると,0~1秒では一点鎖線で示した速度の増加に伴い μ が変化する速度依存性と,1~2秒の速度の変化に依らない μ の変化が見られる。そのため,μ の荷重・速度依存のみに着目したモデル化では,実特性と誤差が生じる。今回,この速度変化に依らない μ の変化は,摩擦面温度依存性に起因すると考える。これは,速度一定であってもスリップによって発生する摩擦熱により,摩擦面温度が変化するとの考えによる。 そこで本報告では,逐次変化する摩擦材の μ を高精度に推定可能とするモデルの構築を目的とし,μ の摩擦面温度依存性を考慮可能な物理モデルを構築する。その取り組みとして,2章ではAT実装環境下での摩擦材の μ の荷重・速度・摩擦面温度依存性について,3章ではモデル構築について報告する。2. AT実装環境下における摩擦材の動摩擦特性2.1 実験環境 AT実装環境下における,摩擦材の動摩擦特性計測に用いた実験環境の概略図をFig. 3に示す。計測には,マツダ製FF6速ATを使用し,実車代替ベンチへ搭載することで図に示す実験環境を構築する。計測対象としたクラッチの構成は,ドライブプレート3枚,ドリブンプレート4枚である。また,ドリブンプレートにはサーミスターを取り付け,得られた温度を摩擦面温度とする。

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