マツダ技報2023
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ls―141― ]-[ ytisned ytilibaborP ] Input Load, Oil temperature, Clutch relative speed [ i 0Fig. 10 Block Diagram of μ ModelVh3.2 流体摩擦力モデルの構築 摩擦材の形状を考慮した流体摩擦力を計算可能とするため,3DCFDモデルを構築する。モデル構築にあたり,面間距離hの導出が必要である。そこでFig. 9より,スリップ面では摩擦対それぞれの表面粗さの間に油膜が形成されると考え,表面粗さの中央値からhを導出する。そこで,摩擦材とドリブンプレートの表面粗さと圧縮特性の計測を行う。表面粗さの計測結果をFig. 11に示す。計測結果より,クラッチへ印加する荷重が小さい場合は,摩擦材とドリブンプレートの表面粗さの中央値の和より,hは24.2μm(23.8μm+0.4μm)とし,荷重が高い場合は,表面粗さと圧縮特性から計算した値:20.0μmとなる。 導出したhとドライブプレートの形状から構築した3DCFDモデルをFig. 12に示す。CFD ツールはSimcenter STARCCM+*を用いる。Fig. 12のコンター図はシミュレーション領域における潤滑油の体積分率である。解析条件は,h:20μm,潤滑油温:80℃,クラッチ差回転:500rpmである。なお,モデルの解法,メッシュ条件等については文献(4)に示す。Process F/B F/B Calculation of the interplane distance h Calculation of clutch friction Fluid friction Boundary friction Output Clutch relative speed μ Volume fraction of oil h: Oil film thickness Ar: Real contact area τ: Shear strengthCalculation of Temperature 2.0m N1.5 e1.0u qro0.5 T d 0.0ulF10%Fig. 11 Measurement Results of Surface RoughnessFig. 13 Simulation Result of CFD Model5%0%Oil Flow Inlet Pressure boundary: 0Pa 0% 50% Air Volume fraction of oil [-] Fig. 12 CFD Model h: 20µm h: 25µm Clutch relative speed [rpm] 250500Friction facing Median : 0.4µm Median : 23.8µm Driven plate 10-2010-110113Roughness height [µm] 10027501000Periodic boundary condition 100% Oil 1024 ここで,μ の速度,摩擦面温度依存性の再現にあたり,式(6)中の流体せん断応力slが式(7)に示すニュートンの粘性法則に則ると仮定する。すると,slは速度依存性をもち,かつ粘度 η は温度依存性をもつ。また,見かけの接触面積Aが真実接触面積Arよりも十分に大きい(3)ことから,摩擦材の摩擦現象における流体摩擦力の寄与率が大きく,μ の速度,摩擦面温度依存性を説明できる可能性がある。そこで,寄与率が大きいと考えられる流体摩擦力について,摩擦材の形状を考慮可能な3DCFDでのモデル構築と,解析を実施し,μ の荷重・速度・摩擦面温度依存性を考慮可能な μ 推定モデルの構築を試みる。(8) 今回モデル化対象としたクラッチは,2枚の摩擦材のペアが線対称に配置されており,そのペアが等間隔でリング状のプレートに貼り付けられたものである。そこで摩擦材のペア1対とその周辺のみをモデル化対象とし,周期境界条件を設定することで,ドライブプレート全体を表現する。また,クラッチ内周側の境界条件はクラッチ面間へ潤滑油を供給する流量境界と,大気開放を想定した0Paの圧力境界を並列に配置する。外周側は大気開放を想定した0Paの圧力境界を配置する。 構築したモデルの解析結果より,流体摩擦力は速度,温度依存性をもつこと,hによる変化から荷重依存性をもつことを確認した。解析結果をFig. 13に示す。Fig. 13はクラッチ伝達トルクとの比較のため,流体摩擦力をトルクに変換して示す。 また,流体摩擦力にて μ の各種依存性を説明できるか検証するため,2章での計測結果における流体摩擦力の寄与率を導出し,Fig. 14に示す。その結果,今回の計測範囲においては流体摩擦力の寄与率は最大でも6%程度と非常に小さく,μ の各種依存性を流体摩擦力のみで説

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