マツダ技報2023
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 3章にて構築した μ 推定モデルの妥当性を検証するため,計測結果との比較を行う。計算条件は計測条件(Table 1)と同一とする。比較の結果,Fig. 20に示すとおり,構築したモデルが逐次変化する μ 特性をよく再現している。特に,本モデルは,従来困難であった μ の摩擦面温度依存性を考慮可能することで,2~3秒の区間における μ の低下を再現できている。また,2秒付近では,速度依存性と摩擦面温度依存性の双方を考慮することで,計測結果をよく再現することができている。―143― ]C°[ ]-[ tne iciff eoc no itcir FecafruserutarepmetnoitcirF ] r orre m um ixaM ] ]C °[ eru tare pm ete tap D mpr[ l 0 l l [ o euqrothctulc fdeepsevitaerhctuCnevir Heat source 6420-2-4-6mNResults40°C, 100rpm 80°C, 100rpm Load [kN] Fig. 21 Model Validation Results150010005004. 構築した μ 推定モデルの妥当性検証5. 結論Thermal resistance Heat capacity Driven plate Fig. 18 Clutch Feat Flow ModelTable 2 Analysis Conditionresistance [K/W]Friction facingDriven plateOilDrumAT body1401201008060402000.01.0Fig. 19 Measurement and Simulation Result of Driven  Fig. 10に示すように,本モデルから得られる摩擦面温度を摩擦力計算,荷重分担計算へフィードバックする統合計算モデルを構築することで,μ の摩擦面温度依存性を考慮可能とする。Plate Temperature 80°C, 500rpm Friction facing Oil Drum AT body Thermal Heat capacity [J/K]8.60.6724.2166.7166.780.10.70.91.09.93.02.0Model Measurement Relative speed Time [s] 0.180.170.160.150.14Fig. 20 Comparison of Model and Measurement  次に,Table 1に示す広い計測条件全体でのモデル妥当性検証を行う。検証は,当初の目的であったクラッチの制御性向上への効果に着目するため,クラッチ伝達トルクにて実施する。クラッチ伝達トルクの予実差の最大値を計算条件ごとに取得し,横軸に荷重を取り整理した結果をFig. 21に示す。予実差は全域で±4Nm以内に収まっており,モデルが精度よく実測値を再現している。これは駆動源からのショックをドライバーに感じさせない制御の実現に対して十分な精度である。0.00.5Only µV model Built µ model Measurement Temperature 0.01.02.0Time [s] Better 3.01.01.5160130100704080°C, 500rpm 40°C, 500rpm いては,更に物理的意味合いに踏み込んだ,より適切なモデル適用法の検討が今後の研究課題と考える。3.5 摩擦面温度推定モデルの構築と統合計算への反映 μ の温度依存性を考慮するには,スリップにより逐次変化する摩擦面温度を推定する必要がある。そこで,Fig. 1のクラッチの構造から,AT実装環境下の熱等価回路モデルを構築する。モデル構築には,マルチドメイン1DシミュレーションツールであるESI ITI社のSimulationXを用いる。Fig. 18にモデルの構成を,Table 2に計算条件を示す。 計算の結果,Fig. 19に示ように,構築したモデルにてスリップにより逐次変化する摩擦面温度を再現することができている。 本報告では,AT実装環境下における摩擦材の高精度 μ 推定を目的とし,実験から μ の荷重・速度・摩擦面温度依存性を明らかにし,μ の温度依存性を考慮可能な物理

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