マツダ技報2023
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 2050年カーボンニュートラルの実現に向けて,自動車業界では電動化とそれに伴う軽量化が加速している。特に,市場実績のない車両構造や部品の適用,マルチマテリアル化の拡大が著しい。更に,ライフサイクルアセスメント(LCA)削減のために製造設備や製造方法の変更も急速に進んでおり,商品開発プロセスの変革による開発の効率化がより一層求められている。安全・安心を担保する基本品質と社会生活をいきいきと送るための魅力品質を向上させることが,人とクルマの共生には必須である。そのため,自動車には世界のさまざまな過酷な環境でも腐食しないように,塗装に代表される防錆対策が施される。従来の防錆評価は,市場の代表的な腐食環境に基づき試験槽内で腐食を促進することで,市場15年相当分の耐久性を2~4か月程度かけて試験するが(以降,実腐食試験と記載),材料,工法,生産条件などに影*1~6  技術研究所 ―145―Key words:Materials, Paint, Test/Evaluation, Corrosion resistance, CoatingThe rust prevention quality in vehicles is extremely important for the safety and security of customers. Rust preventive measures such as painting, etc. are taken to prevent corrosion even in various harsh environments around the world. We have developed the accelerated evaluation techniques to assess corrosion resistance quantitively. Utilization of this developed technology enables us to detect signs of quality abnormalities by using machine learning for analysis of the profiles that consist of current and voltage obtained by corrosion resistance evaluation, in addition to being able to quantitatively control the rust prevention quality with a threshold value.Technical Research CenterTatsuya EzakiTakamasa AdachiTeruaki AsadaTsutomu ShigenagaKatsunobu SasakiAkihide Takami1. はじめにQuality Abnormality Prediction Technology Utilizing Accelerated Evaluation Techniques for Corrosion Resistance of Painted Parts論文・解説24要 約 自動車の防錆品質は,お客様の安全・安心に,直結し非常に重要である。自動車には世界のさまざまな過酷な環境でも腐食しないように,塗装などの防錆対策が施される。これまで著者らは,塗装部の耐食性を迅速に定量評価する技術を開発した。この技術の活用により,防錆品質を閾値によって定量的に管理できることに加えて,耐食性の定量評価により得られる電流と電圧からなるプロファイルの解析に機械学習を適用することで,品質異常の予兆を検知することが可能となった。Abstract江﨑 達哉*1浅田 照朗*2佐々木 將展*3髙見 明秀*6足立 崇勝*4重永 勉*5響する因子が多岐にわたり防錆品質を造り込むためには複数回の試験が必要で,ひとつの技術を開発するために少なくとも数年を要するといった課題がある。自動車の防錆技術の更なる発展,カーボンニュートラル対応やLCA削減をタイムリーに実現するためには,耐食性(防錆機能)を迅速に定量的に評価する技術が必須であり,それを活用した効率的な品質管理も重要である。 これまでに著者らは,塗装部の腐食は,水やイオン物質などの腐食因子が防錆塗膜を透過して素地金属に到達することで始まり,素地金属の溶出に伴い発生した電子を消費する電気化学反応で腐食が進展するというメカニズムから,塗装部の防錆機能を①腐食抑制期間と②腐食進展速度の2つで整理し(Fig. 1),その双方を電気化学的な手法で数分~数時間程度と迅速に定量評価する技術を実用化した(1~5)。本研究では,防錆機能の迅速評価法の中で,①腐食抑制期間を評価した際の分極プロファイル(電流/電圧プロファイル)について,電着塗膜の故塗装部の耐食性迅速評価法を活用した品質異常予知技術

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