マツダ技報2023
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―148―Fig. 7 Polarization Profile of Test Pieces with Varying Gel Fractions, Baking Temperature: 408-433K, Baking Time: 900-1200s, Thickness: 10×10-6 mFig. 8 Polarization Profile Normalized by Maximum Current Value and Maximum Voltage Value, Baking Temperature: 408-433K, Baking Time: 900-1200s, Thickness: 10×10-6 mFig. 9 Failure Mode of Coating, Classification Accuracy in Machine Learning, Example of Cyclic Corrosion Test (CCT) Results着塗装時の加熱温度を408~433K,加熱時間を900~1200sとし,ゲル分率が78.4~95.3%の試験片を作製して分極プロファイルの解析を行った。ゲル分率が90%未満は本電着塗料の適正使用範囲から外れる領域である。分極測定の結果,ゲル分率が低くなるに従い,通電開始電圧が低下した(Fig. 7)。この通電時の立ち上がりの傾きを,視覚的にわかり易くするために,測定時の最大電流値と最大電圧値でまとめた(Fig. 8)。ゲル分率が90%以上の正常な塗膜の分極プロファイルは,初期には電流が流れず,高い電圧で急激な立ち上がりを示した。 これは前述したように,正常塗膜では,塗膜内へ水やイオン物質が浸透し難く,高い電圧に到達した際に最も脆弱な部位で急激に絶縁破壊(通電)が起こるためであると考えられる。一方,ゲル分率が90%未満と低く膜質が悪い塗膜では,正常塗膜と比較すると低い電圧で通電が開始し,緩やかな傾きの立ち上がりを示した。塗膜全体に水とイオン物質が浸透して素地金属に到達し,微弱な電流が塗膜全体を介して流れたためであると考えられる。紫外線を照射して劣化させた塗膜においても同様の傾向が認められた。これらのことから,電着塗膜の分極プロファイルの解析から,膜質変化をとらえるためには,通電開始の電圧値に加え,分極プロファイルの立ち上がりの傾きを分析することが重要であると考えられた。4.4 分極プロファイル解析に対する機械学習の適用 通電モデルを基に解析した分極プロファイルとその特徴から,電着塗膜の故障モードの判定に機械学習を適用した。機械学習手法はランダムフォレスト分類を使用した。構築した分類モデルの精度は,一点除外交差により評価した。 まず,正常塗膜・異常塗膜の2クラス分類のモデルを構築し,分類精度を確認した結果,100%であった。すなわち,正解ラベルが正常塗膜である19仕様は全て正常塗膜と判定され,正解ラベルが異常塗膜である43仕様は全て異常塗膜と判定された。次に,異常塗膜の中で異常原因を細分化し,塗膜の故障モード別(膜厚異常,膜質異常)に分類し,3クラス分類のモデルを構築した。分類精度は,正解ラベルが正常塗膜の仕様が100%,膜厚異常の仕様が100%,膜質異常の仕様が95%であった。すなわち,正解ラベルが膜質異常である24仕様のうち,1仕様のみ膜厚異常と判定された(Fig. 9)。 図の右列(Fig. 9)に各故障モードの試験片における実腐食試験後の腐食状態の一例を示した。正常塗膜に錆の発生はないが,同条件で実腐食試験を行った膜厚異常の塗膜には局所的な腐食が認められた。膜厚が薄い部分が局所的に存在し,その部分が早期に錆びたと考える。膜質異常の塗膜では全面に腐食が認められた。膜質が悪い塗膜では,塗膜全体に水とイオン物質が浸透して素地金属に早期に到達し,全面が腐食したものと考えられ,これらの現象は分極測定における通電モデルと合致する。以上のことから,分極プロファイル解析に機械学習を適用することで,専門家が都度データを詳細に解析することなく,正常から異常な状態へ変化していく早期の段階で問題を発見できると考えられた。4.5 耐食性迅速評価法の品質管理での活用 防錆品質管理システムの例を示す(Fig. 10)。工場ごと

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