マツダ技報2023
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(1) 浅田照朗ほか:モデルベース研究による防錆定量評価法を活用した品質異常予知技術,自動車技術会春季大会 学術講演会講演予稿集,ROMBUNNO.284(2022)(2) 浅田照朗ほか:塗装部の耐食性迅速評価技術のモデルベース研究開発,マツダ技報,No.38,pp.133-138(2021)(3) 浅田照朗ほか:高電圧印加法を用いた電着塗装鋼板の耐食性評価,材料と環境,Vol.68,No.4,pp.92-97(2019)(4) 浅田照朗ほか:塗装部の新規耐食性短期評価法の開発,及び防錆技術開発・品質管理への活用,自動車技術会春季大会 学術講演会講演予稿集,pp.1148-1151(2017)(5) 浅田照朗ほか:塗装部の耐食性評価法とその活用事例,第63回材料と環境討論会 講演集,pp.175-176(2016)(6) 矢部政実ほか:各種耐光性試験による塗膜の劣化メカニズムの解析,塗料の研究,No.146,pp.8-15(2006)(7) 川久保秀子:重みつきランダムサンプリングによるランダムフォレスト法,情報処理学会研究報告 数理モデル化と問題解決(MPS),Vol.2011-MPS86 No.33,pp.1-2(2011)―149―Fig. 10 System to Control the Rust Prevention Quality5. まとめに本評価装置を配備し,製品検査工程で耐食性評価を行い分極プロファイルデータを得る。この分極プロファイルデータをデータサーバーに集約して一元管理するとともに,事前に機械学習により構築した分類モデルを用いて分極プロファイルの解析を行うことで,一般的な閾値管理に加え,品質が正常から異常な状態へ変化していく早期の段階で,問題発生の有無を発見できる。解析の結果,異常の予兆を検出した場合には工場に品質異常アラートを送信し,工程を点検することで品質異常を未然に防ぐことが可能となる。このように,品質管理に未然防止の仕組みを導入することができると考えられた。 本技術はエポキシを主とする自動車の電着塗装以外に,幅広い塗装系にも適用可能であることから,自動車業界のみならず,塗装鋼板を取り扱う他業界への展開も期待できる。 (1)防錆定量化法の分極プロファイルを分析することで,電着塗膜の異常原因を推察できることを明らかにした。 (2)正常な電着塗膜の場合には,塗膜内へ水やイオン物質が浸透し難く,腐食抑制期間の分極測定において,数百Vの高い電圧に到達した際に最も脆弱な部位で絶縁が破壊され急激な通電が生じることが分かった。 (3)ゲル分率が90%未満と低く膜質に異常のある塗膜では,塗膜全体に容易に水とイオン物質が浸透して素地金属に到達するためであると考えるが,正常塗膜と比較して低い電圧で通電が開始し,緩やかな傾きの立ち上がりを示すことが分かった。 (4)スパッタなどのコンタミにより局所的な有効膜厚低下が生じている塗膜は,分極プロファイルに複数の凸形状を生じることが分かった。また,凸形状の数と単位面積当たりのスパッタ数は高い相関(R=0.9)があることを見出した。分極プロファイルに凸形状が生じる理由は,塗膜内へ浸透した水やイオン物質がスパッタに接触すると通電が開始し,この時の電流値が閾値として設定した値以下であれば,水の電気分解で発生するガスが通電起点を一時閉塞して電流が流れなくなることに起因すると推定した。 (5)分極プロファイルの特徴を基に機械学習モデルを構築し,電着塗膜の故障モードを自動判定する技術を開発した。 (6)正常塗膜,及び代表的な故障モードの試験片を用いた試験から得られた分極プロファイルから,まず,正常・異常の2クラス分類を実施した。その結果,分類精度は100%であることがわかった。 (7)異常塗膜の中で原因を更に分類すると膜厚異常の分類精度は100%,膜質異常は95%であった。分極プロファイル解析に機械学習を適用することで,専門家が都度データを詳細に解析することなく,品質異常を予知することが可能となった。 本技術を活用した防錆品質管理システムにより,品質管理に未然防止の仕組みを導入することが期待される。参考文献

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