マツダ技報2023
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viba10 a(2)―153―Fig. 4 Kelvin Cell Model for Linear Vibration Analysis of Foamed Porous Material in Micro Scale2.2 大変形を考慮した非線形静解析モデル シートのように人間が座ることを前提とした部材の振動伝達制御を考える場合,荷重により多孔質材が圧縮された状態での弾性特性が重要である。共振周波数を高精度に制御するには,歪みに応じた基材の弾性率を予測する必要がある。線形領域外の大変形を考慮した非線形解析を行い,準静的な応力歪み特性を得なければならない。また,発泡樹脂材のような多孔質材の場合,大きな荷重が加わると骨格部分が座屈しながら他の骨格部分と接触をしつつ変形をしていくため,座屈や多数点での接触解析を行う必要がある。このためこのような現象を取り扱える汎用有限要素法解析ソフトAbaqus(14)を用いることとした。材料と形状の非線形性を考慮し,かつペナルティ法による一般接触の定義によって接触発生の箇所・順序及び複雑な変形による相互接触状態を予測できるよう静解析を行う。Fig. 5に概要を示すように,この非線形静解析により得られる応力歪み特性から必要な荷重域での弾性率を求め,振動伝達率の解析を行う。Fig. 5 Schematic View of Non-linear Vibration Analysis Model2.1 固体相と流体相の相互作用を考慮した線形振動 多孔質材内部を伝搬する振動は固体相である骨格部に生じる振動と流体相に生じる振動が相互に影響しながら伝わっていく。前述のように,これまでに音響エネルギーが多孔質材内部で熱エネルギーに変換される吸音現象を模擬するために,材料を周期構造と仮定して均質化法によって固体相と流体相の相互作用を考慮したモデル化を行った(4)。吸音現象と今回取り扱う振動伝搬現象との違いは,入力が音響加振であるか構造加振であるかの違いであり,エネルギー伝搬のメカニズムは同じである。そこで加振条件のみを構造加振に変更し,同じモデルを用いて振動伝搬現象を模擬した。Fig. 3にモデル化の概要を示す。 まず微視構造における骨格と流体の相互作用を考慮した定式化((1)固体相弾性場,(2)流体相流れ場,(3)流体相熱伝導場(対流,輻射はなし),(4)固体-流体間の界面での変位・応力・温度の連続条件)を行う。これを有限要素法(FEM)によって解いて,マクロな等価弾性率などの均質化特性を導出する。その均質化特性を用いた多孔質材料とパネル等で形成される巨視的なばね-マス系を有限要素法によってモデル化する。これを解いて系の振動伝達特性が求められる。Fig. 3 Schematic View of Linear Vibration Analysis Model by Homogenization Method また,振動伝達率τvibを次式のように伝達側パネルの加速度と加振側パネルの加速度の比で定義する。 対象とする材料は,シート用基材として一般的な軟質発泡ウレタンである。セル構造としては2.1のモデルと同様Kelvinセルを用いるが,シート用のウレタンの骨格には膜がほとんど残っていないため,Fig. 6のように骨格だけのKelvinセルを用いる。モデル 今回の検討では一般的な防振材に使われる発泡ウレタンを対象とする。微視スケールでの構造モデルとして,その骨格モデルとして良く用いられるKelvinセルを採用する(Fig. 4)。

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