Fig. 14より,解析結果は空隙率が大きくなる,すなわち骨格が細くなるにしたがって材料の見かけ弾性が下がっていることが分かる。また,空隙率0.9及び0.95の応力歪み特性は,大きく三段階に分かれて変化していることが分かる。すなわち,歪み量がゼロから増えていくにしたがって最初はほぼ一定傾きで推移していくが,ある歪み量になったときに急激に傾きが小さくなってある程度一定傾きのまま推移し,またある歪み量になったときに傾きが大きくなっている。この傾向はFig. 15に示す実測値の傾向と定性的に一致している。このように大変形を生じさせたときの多孔質材のマクロな見かけ弾性は歪み量に応じて大きく変わるため,振動特性を評価する前に,対象部材の評価荷重に対応した弾性率を把握する必要がある。 一方で,Fig. 14の空隙率0.95の解析結果とFig. 15の実測結果(空隙率0.94)を比較すると,縦軸のスケールが一桁異なっており,解析結果の弾性率(グラフの傾き)の方が数倍から10数倍程度大きい傾向を示し,定量的な予測精度には課題を残す。原因としては,まず骨格の応力歪み特性をFig. 12のように発泡していない熱可塑性ポリウレタンの特性で代用していることが考えられる。また実物の気泡形状とKelvinセルの形状に差異があることなども考えられる。今後の課題として,前者については発泡ウレタンの実物の弾性率を測定する方法を,後者については実形状をどのように単純化してモデル化するか検討中である。 弾性が三段階に変化するメカニズムを推定するために,空隙率95%の時の応力歪み特性解析結果と変形モード・応力分布・接触面分布を合わせてFig. 16,17に示す。最初の傾き(図中の①)ではセルが線形に圧縮されているが,最初の変曲点において2段目のセルに応力が集中しはじめ(図中の②),座屈が始まる様子が伺える。更に変形が進むと上下段のセルも座屈し,骨格がつぶれて他の骨格と接触し始め(図中の③),完全に骨格がつぶれた(図中の④)後に,また曲線の傾きが大きくなっている(図中の⑤)。―156―Fig. 14 Analysis Results of Stress-strain Properties: Comparison of Porosity φ Di■erences (Cell Size: 500μm)Fig. 13 Analysis Results of Stress-strain Properties: Comparison of the Number of Cells in Height DirectionFig. 15 Measurement Results of Stress-strain 450μm, Porosity: 0.94, Diameter: 100mm, Properties: Polyurethane Foam (Average Cell Size: Thickness: 50mm)Fig. 16 Stress-strain Properties and Deformation by Analysis (Cell Size:500μm, Porosity:0.95)の応力歪み特性を解析した。100段というのは実測で用いるテストピースの最大厚(500μm×100=50mm)を想定した高さである。解析結果をFig. 13に示す。このように,3段でほぼ100段と同じ値に収束することが分かった。この結果と計算時間も考慮して,今後の解析は3×3×3=27個のセルに対して行うこととした。 解析するユニットセルのサイズは後述のテストピースとほぼ同等の500μmで固定とし,骨格の太さを変えて空隙率を85%,90%,95%と変化させたときの応力歪み特性の解析結果をFig. 14に示す。またウレタンテストピース(平均気泡径450μm,空隙率94%,直径100mm,厚さ50mm)の応力歪み特性の実測結果をFig. 15に示す。
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