マツダ技報2023
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 A6111/A5052及びA6111/ADC3におけるピーク強度を示す継手のマクロ断面観察結果をFig. 9に示す。接合界面を破線で表示した。異なる強度特性をもつ材料の組合せによりプローブ周囲の下板の巻き上がりの形状は大きく変化する。その中でツール挿入量を制御し,各板組みごとに材料の塑性流動状態及び上板残厚を適正にすることが重要となる。―160―Fig. 5 Comparison of Weld Lobes by Tool Rotation Speed(6)3.2 断面観察による強度影響因子の検討 A6111/ADC3において,ピーク強度を示した接合条件で作製した継手断面のSEM観察を行った(Fig. 6)。板間に塑性流動して混ざり合った領域は存在せず,プローブ周囲において下板材料が大きく巻き上がるように接合界面が変形していた。また,下板の巻き上がりの頂点から接合部外周側に向けての途中に接合/未接合領域の境界が存在しており,その境界間が接合ナゲット径となる。塑性流動した領域では上板,下板ともに結晶粒が微細化しており,プローブ近傍及び界面近傍に材料の流動方向への粒子の変形が観察された。Fig. 6 SEM Survey Results on Cross-SectionFig. 7 Comparison of Fracture Form3.3 実用化を想定した取り組み 実用化時の継手の設計や施工のデータベースとして活用することを目的に,一般的な車体骨格部材を想定した板組みに対し,ここまでの調査結果をベースとした適正条件下におけるウェルドローブを取得した。A6111,A5052,ADC3を含む各板組みにおけるウェルドローブをFig. 8に示す。これらの板組みでは安定的にJISA級平均強度を確保できることを確認した。Fig. 8 Weld Lobes of Each Material Specification示す。ピーク強度を示す上板残厚は変化するが強度に大きな差は見られず,他の板組みでも同様の傾向であった。接合中の材料の発熱量に影響を与えるツール-材料間の面圧と接合時間はツール挿入速度により相対的に変化することが影響し,今回の調査範囲では強度レベルに大きな差が表れなかったと考えられる。(3)ツール回転速度 ADC3/A6111においてプローブ径3mm,ツール挿入速度30mm/minとし,ツール回転数を変化させた場合のウェルドローブ比較をFig. 5に示す。回転速度が速いほどピーク強度を示す上板残厚は増える方向にシフトするが,強度レベルに大きな差はない結果となり,これは他の板組みも同様であった。 ツール挿入量の違いにより破断形態が変化した継手3種について,材料の境界が見えやすいようEPMAによるSi成分の面分析で断面を可視化した結果と,破断後の継手外観の比較をFig. 7に示す。挿入量が増えるほど上板残厚が減少し,破断形態は界面→部分プラグ→プラグと変化する。また,ピーク強度は部分プラグ破断時に示した。継手強度は破断亀裂が走る際の材料強度と進展距離(面積)によって決まる。そして,亀裂の進展経路は材料の塑性流動状態,材料界面における接合/未接合の境界位置,上板残厚,熱影響後の材料強度などの影響を受けて変化すると考えられる。

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