マツダ技報2023
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,1,VVViif―163―,1CD,i Fig. 1 Vortex Region MethodFig. 2 Vortex Core Line Methodの発生原因である渦をいかに制御するかが重要である。特に,自動車の空気抵抗増大に関連する渦は,渦の中心で圧力が周囲より低く,旋回運動を伴う特徴をもつ低圧旋回渦であることが実験的に観察されている(2)。一方で,空気抵抗は自動車の外形形状と関連が強いため,デザインと両立しながら空気抵抗を低減することが重要な開発課題となっている。 この課題に対して,筆者らは渦と空気抵抗のモデル式を構築することで,解決を目指している(3)。具体的には,渦の場所を特定し,個々の渦を空気抵抗に関連する物理量で定量化し,データ分析手法を用いて,(1)と表すことである。ここで,CDは空気抵抗係数,Viはi番目の渦の定量値である。このようなモデル式ができれば,デザイン形状により発生する渦は触らずに,目標の空気抵抗を達成するためにどの渦をどれだけ制御すればよいかが分かる,つまりデザインと空気抵抗低減の両立を実現する空力開発の戦略立てに役立つことが期待される。更に,空気抵抗に寄与する大きな渦を小さくする効果をもつ渦の発見や,渦同士の複雑な相互作用を逆に利用し,あえて渦を作るという新しい発想ができることで,流線形の外形形状でなくても低空気抵抗を実現できる可能性がある。 渦と空気抵抗のモデル式を構築するためには,まず自動車周りの複雑な流れ場から渦の場所を特定する渦同定手法が必要である。モデル式の構築のために,渦同定手法は以下の三つの要請を満たす必要があると考えられる。一つ目は,低圧旋回渦を同定できることである。これは前述にあるように,低圧旋回渦は自動車の空気抵抗に関連するためである。二つ目は,自動車が走行する状態と風洞状態で同定された渦が同じである,つまり同定された渦がガリレイ変換に対して不変である。ガリレイ変換は,静止または等速度運動している二つの座標系の変換であり,流体の運動方程式であるナビエストークス方程式はガリレイ変換を施しても方程式の形が変わらず不変である。この性質を利用して,自動車空力の研究開発では,再現性や簡便性の観点から,地上に固定した座標系,すなわち空気が静止して自動車が走行する環境でなく,自動車とともに等速運動する座標系,つまり空気を動かして自動車を固定する風洞状態を用いることが多い。しかし,渦同定手法によっては,同定された渦がガリレイ変換に対して不変でないことが指摘されている(4)。三つ目は,渦の個別同定である。これは,モデル式において,空気抵抗の説明変数として定量化された個々の渦を用いるためである。 一方で,さまざまな流体現象下で渦を同定するために,これまでに多くの渦同定手法が提案されている(5)。しかし,これらの従来手法は,モデル式の構築に必要な渦同定手法の要請を満たしていない。 渦同定手法は,大きく分けて領域型と渦中心型の二種類に分けられる。まず,領域型の可視化事例をFig. 1に示す。領域型は,スカラーの物理量の等値面を用いて渦の領域を同定する手法であり,三次元空間の大規模な渦の同定に適する。しかし,ユーザーが選択する等値面の閾値によって渦の同定結果が変わること,本来個別に存在する渦同士が連結し,塊として可視化されることから,渦の個別同定が困難である。次に,渦中心型の可視化事例をFig. 2に示す。渦中心型は,線を用いて旋回する渦の中心軸を同定する手法であり,小規模な渦の把握に適する。しかし,渦の中心軸が断片的になり,多数の渦が可視化されるため,複雑な流れ場での渦の個別同定が困難である。 そこで,筆者らは,ガリレイ変換に対して不変で,かつ低圧旋回渦の渦中心軸を同定できる渦中心型の圧力断面極小旋回法(4)(6)に着目した。しかし,この手法を自動車周りの流れ場に応用するためには,二つの課題がある。一つ目は,さまざまな形の計算格子で使用できるよう手法を拡張することである。圧力断面極小旋回法は,乱流の基礎研究で用いるため,規則正しく並んだ立方体の計算格子を前提としている。自動車周りの流れ場のシミュレーションでは,自動車の複雑な形状を再現するため,四面体や三角柱などのさまざまな形の計算格子,いわゆる非構造格子を用いることが多い。二つ目は,渦中心軸の断片化を抑制するアルゴリズムの開発である。渦中心型の手法は,渦中心軸が断片化しやすく,渦の個別同定が困難になりやすい(5)。 そこで,本稿は圧力断面極小旋回法を自動車周りの流れ場に応用し,その有効性を示すために,筆者らが行った手法の拡張内容及びその検証結果(7)(8)(9)について解説する。

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