マツダ技報2023
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椿 貴紀―12―Fig. 16 Artisan Red Premium Metallic 5.1 ホイール ホイールは,どちらも新規となる,大径の21インチと19インチ,2つの造形をデザインした。どちらも,外周リムからホイールセンターへと向かう奥行きの深さを強調した,立体感あるスポーク形状とし,エクステリアデザイン同様に,スポーティネスとSUVらしい力強さの融合を表現するとともに,空力を始めとした最新の機能と性能を織り込んだ造形としている。 加えて,21インチにおいては,2つの異なる表面処理を用意した。上級グレードには,ブラックメタリック塗装をベースに,シャープなグラフィックをもつ切削処理をリム外周に沿わせて配置した仕様を用意。大径を強調しつつ,先進感や上質さをも感じさせる表現とした。またその巧みな表面処理の違いによって,同形状でありながら全体がシルバー塗装となる仕様に対して,全く違う形状であるかのような印象を産み出すことに成功している(Fig. 15)。Fig. 15 New Designed 21 inch Alloy Wheel5.2 新色 北米市場においては新規導入となる外板色,「アーティザンレッドプレミアムメタリック」をラインアップに加えた。グローバルでは,2022年末のMAZDA 6の20周年記念車から導入された。更に,今後導入するラージ商品群および既存ラインアップの商品に,上級感を際立たせる色として導入する。CX90においてはイメージカラーであるため,ここでも紹介しておきたい。 マツダ車における赤の表現としては,ブランドを代表するカラーでもある「ソウルレッドクリスタルメタリック」がある。それに対して「アーティザンレッドプレミアムメタリック」は,「ソウルレッドクリスタルメタリック」のようなビビッドな赤を感じるハイライト部と,ほとんど黒ともいえるほどに深く落ちるシャドウ部を併せもつ,マツダを象徴する赤の世界観を拡げる色である。まさに,熟成されたフルボディの赤ワインのような深みを感じる色となっており,CX90の車格に相応しい新色である(Fig. 16)。5. ホイール&新色6. おわりに 近年,自動車を取り巻く世界は劇的な変化を迎え,100年に一度,つまり自動車が発明されて以来の変革期ともいわれている。その中で,CX90を始めとするラージ商品群が,どのように世界を走り抜けていくのかは,現時点では未知数である。それゆえに,関係者全員で苦労に苦労を重ねつつ,ようやく製品として世に出せたこの瞬間でさえ,決してゴールではない。そしてこのCX90を,どこまで製品・ブランドとして成長させることができるか?またその過程で何を学び,何を未来へと活かすのか?は,チーフデザイナーとしての私の使命だと感じている。これからも決して立ち止まることなく,このCX90とともに成長し続けていかなければならないと考えている。■著 者■

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