マツダ技報2023
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―17―Previous2.5TFig. 12 Heat Balance4.2 燃焼アシスト始動 マイルドハイブリッドを採用する新型3.3Tは,EV走行状態からエンジン再始動時に,始動に必要なモータートルクを確保しておく必要がある。この始動用のモータートルクを低減させてEV走行範囲を更に拡大して燃費改善を図るため,停止時膨張気筒を燃焼させ,始動用のモータートルクを燃焼トルクによって低減させる燃焼アシスト始動技術を開発した(Fig. 13)。Fig. 13 Combustion Assist StartFig. 14 Transportation of the Fuel InjectionNew3.3TFig. 15 CAE Result of A/F Around Spark PlugFig. 16 Improvement of Scavenging and Floor Acceleration 燃焼アシスト始動は無圧縮の停止時膨張気筒を燃焼させるため,筒内流動に頼らない混合気形成と,無圧縮での低温低圧下で確実に火炎伝ぱさせるための筒内残留ガスの低減が重要になる。 まず混合気形成は,噴霧噴射エネルギーによってスパークプラグ近傍に混合気を輸送する機能を,ピストン形状と燃焼室形状を最適化して実現した(Fig. 14)。 更に噴射多段化により,燃焼噴霧の筒内壁面への付着を低減して混合気をリッチ化し,前段噴霧の混合気の流動を後段噴霧の噴射エネルギーで維持してスパークプラグへ輸送することで,着火に必要なリッチ混合気を早期に形成させた(Fig. 15)。 次に筒内残留ガスの低減は,エンジン切り離し後からエンジン停止までの過程に掃気を行うことで実現する。単純にスロットルを開け,新気導入量を増やすと掃気が促進されて残留ガスの低減が可能となるが,新気導入量が増えることで圧縮反力によるクランク軸の角加速度変動が大きくなり,エンジン停止前のフロア振動が悪化する(Fig. 16-①)。 この背反を両立させるために,エンジン切り離し直後を 掃気区間,エンジン停止前を フロア振動抑制区間 として,まず 掃気区間ではスロットルを大きく開けて新気導入量を増やすことに加え,吸気SVTを進角させて圧縮工程中の吸気閉タイミングを下死点側とすることで,吸気系への既燃ガス吹き返しを減らして残留ガスを低減させる。 次に フロア振動抑制区間では,圧縮反力が小さくなるようスロットルを閉じ,吸気SVTを遅角させることで有効圧縮比を下げてフロア振動を抑える。これらにより,残留ガス低減とフロア振動低減の両立した(Fig. 16-②)。 Fig. 17に停止時膨張気筒の燃焼有無でのエンジン再始動挙動の比較を示す。停止時膨張気筒を燃焼させることで,始動性能を損なうことなく始動時に必要なモータートルクを低減してEV走行領域を拡大した。

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