マツダ技報2023
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1.SI燃焼の進化とともに,排気量を2.5Lから3.3Lに拡大することで,車格の大きいCX90を力強く加速させるために十分なトルクと出力を達成した。2.排気量拡大かつBMEPの最大値を現行より抑えることに加えて,燃焼室内の流動の強化と維持によるSI燃焼の進化によってノッキングを抑制し,現行2.5Tからの高圧縮比化を実現した。更に,SI燃焼の進化はEGRを活用した希釈燃焼範囲の拡大を可能とし,吸気遅閉じミラーサイクルとともに,実用域の広い範囲で熱効率改善を実現し,世界トップクラスの低燃費を達成した。また,希釈燃焼によるRaw NOx低減,エッジカットを施したピストンによるRaw HC低減でクリーン排気に貢献した。3.マイルドハイブリッドの採用において,EV走行状態からエンジン再始動時に,最初の膨張工程気筒を燃焼させて始動時に必要なモーター側のトルクを燃焼トルクに配分して低減させる燃焼アシスト始動技術を開発した。EV走行範囲を拡大して,内燃機関の不得意な領域である極軽負荷域での燃費を改善した。4.電子制御ピストンクーリングジェット噴射システムを採用し,運転条件ごとにオイルジェット噴射を最適化して,ピストン付着燃料の抑制,及び燃焼室の早期―18―Table 3 Oil Jet Spray MappingFig. 19 Reduced Oil Pump DischargeFig. 17 Engine Restart Behavior by Combustion Assist4.3 電子制御ピストンクーリングジェット噴射システム ピストンクーリングジェットについては,現行2.5Tでは一定油圧以上で噴射するチェックボール式噴射タイプを採用していたが,新型3.3Tでは,電子制御ピストンクーリングジェット噴射システムを採用した。シリンダーブロック内のメインギャラリーとは別に,オイルジェット専用油路を配置し,オイル通路に油路を開閉できる電子制御バルブを設定している(Fig. 18)。Fig. 18 Oil Jet Electric Control System5. まとめ これにより,エンジン回転と負荷,油温に応じてオイルジェット噴射有無を適切にコントロールし,ピストン過冷却を抑制することで,ピストン付着燃料の低減,燃焼室の早期暖機によるクリーン排気に貢献している。 Table 3にオイルジェット噴射を抑制した領域を示す。従来の一般的なチェックボール式のオイルジェットでは,開弁圧バラツキの影響で,閉弁/開弁時の要求油圧差が生じ,オイルポンプ吐出量を増加させていた。この開閉弁機構を電子制御バルブに置き換えることで,開閉弁時の要求油圧差を削減でき,大幅にオイルポンプ吐出量を抑制した。また,メインベアリング部に鋳鉄インサートを採用することで,温間時のエンドフロー量を抑制した効果も併せて,オイルポンプ吐出量を現行2.5Tと同等に抑制して(Fig. 19),機械抵抗低減に貢献した。

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