マツダ技報2023
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―21―Fig. 1 Engine General ViewFig. 2 Engine General View with Capsule CoverFig. 3 Engine Package View2.3 エンジンパッケージ構想と課題 1.に述べたコモンアーキテクチャー構想により,SKYACTIVD3.3との共通/変動要素をあらかじめ定め,開発効率を最大化,投資を最小化しつつ,求められる高い出力性能と環境性能を限られた空間内で実現することがSKYACTIVG3.3Tのパッケージに求められた。(1)共通要素a. エンジンユニット搭載位置 車両上の搭載位置,角度をSKYACTIVD3.3と合わせることでフロントデファレンシャル及びプロペラシャフト,エンジンマウントなどの大物構造系だけでなく,車両とエンジンを接続する燃料系,温水系,冷媒系,電気系の長尺物部品を共通化した。b. エンジンユニット内部 シリンダーブロックなどの本体構造系,FEAD (Front End Accessory Drive) やクランクシャフトなどの回転系,オイルフィルターやオイルポンプなどの潤滑系及びウォーターポンプなどの冷却系基本構造や配置を共通化した。SKYACTIVD3.3同様,カムシャフトと燃料ポンプをリアチェーン駆動,ドライブシャフトをオイルパン貫通構造としエンジン全高を低減した。c. エンジンユニット外部 Fig. 3にエンジン周辺部品関係図を示す。エアクリーナーなどの車両搭載部品と接続する吸気経路や排気経路も共通化した。例えばターボチャージャーはSKYACTIVD3.3と仕様は異なるが基本位置を合わせることで,ターボチャージャー上流で車両ダッシュパネルに固定される吸気経路を共通化した。また,左右ステアリングシャフトとはあらゆる走行シーンを想定したクリアランスを確保した。 近年,環境性能の改善を目的に多気筒化や電動化技術,また各種センサー類の導入などによりシステムは複雑化し,エンジン寸法は拡大傾向にある。その一方でマツダは走る歓び,魂動デザイン,人間中心の空間設計や高い衝突安全性能等を両立したいと考えている。エンジン周辺の空間制約の厳しさが増し続ける中で,これらを高次元で達成することがエンジンパッケージに求められている。2.2 エンジンシステム構成 Fig. 1にエンジン単体図を示す。排気側に電子制御ウェイストゲート付きのツインスクロール式ターボチャージャーとキャタリストを備え,ターボチャージャー下流吸気経路に順にエレキスロットルバルブ,大容量水冷インタークーラー,インテークマニフォールドをもつ。またシリンダーヘッド内から排ガスを取り出して冷却後にインテークマニフォールドへ戻すHigh-pressure EGR (Exhaust Gas Recirculation) Coolerと冷却水用サブタンクをインテークマニフォールド上部に備え,エンジンの各電子部品とPCM (Powertrain Control Module) をつなぐ大型のハーネスシステムがエンジン長手方向に通る。更にFig. 2に示すように,優れた実用燃費性能と高い遮音性能を実現するため,エンジンルーム内カプセルカバーでエンジン全体を覆う構成となっている。 以上のように,SKYACTIVD3.3と共通骨格をもつガソリンターボエンジンを生み出した。単に部品共通化を図るだけでなくエンジンルーム内の衝突,熱害,防錆,NV(Noise, Vibration)対策までも含めて効率的な開発を行った。更に,新設した直6エンジン組立ラインにおいてはディーゼル,ガソリンエンジンの高効率な機種混流フレ

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