マツダ技報2023
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(3)カプセルカバー開発 2.2で述べたように,ラージ商品群はエンジンルーム内にエンジン全体を包み込む,車体固定のカプセルカバーをもつ。SKYACTIVG2.5やSKYACTIVD3.3と両立するカプセルカバーの基本構造共通化を進めるためには,上記(1)(2)の共通/変動要素を考慮しエンジンの輪郭を決めつつ,部品間公差とあらゆる走行条件におけるエンジン振動を考慮してカプセルカバーとのクリアランスを確保し,同時に他エンジンとの整合性も確認しなければならない。従来の手法では,これら部品間公差,エンジン振動による部品位置変化,部品間クリアランスの計算―22―Fig. 4 Cross-Sectional Diagram of Cylinder HeadFig. 5 Cross-Sectional Diagram of Intake Manifold(Longitudinal Direction View)3.1 吸気パッケージ技術 インテークマニフォールド上のパッケージ問題を解決するため,Fig. 6に示すようにインタークーラーをインテークマニフォールド下に配置した。これにより空いたインテークマニフォールド上にEGRシステム,ターボチャージャー下流吸気経路,エレキスロットルを配置し吸気経路をスムーズにつなげた。インテークマニフォールド下に配置される燃料ポンプや燃料レールとの衝突安全性能との両立が課題であったが,Fig. 7に示すように燃料ポンプ,燃料レールとインタークーラー間のクリアランスを確保しつつ,それらの間に強固なプロテクタを斜め配置することでクリアした。万一の衝突時には荷重を受けたインタークーラーがプロテクタに沿って滑り,後方へスライドすることで,プロテクタ内側の燃料系に衝突荷重を与えず,これらを強固に保護する。このアイデアによりパッケージと機能を同時に満足し,課題解決した。Fig. 6 Cross-Sectional Diagram of Engine Fig. 7 Cross-Sectional Diagram of Engine (Plan View)キシブル生産も可能にした(4)。(2)変動要素 本エンジンはSKYACTIVD3.3にはないユニーク要素ももつ。Fig. 4に示すようにSKYACTIVG3.3Tのシリンダーヘッド内燃焼室はペントルーフ形でシリンダーヘッド高さやカム間ピッチ,吸気ポートの形状がSKYACTIVD3.3と異なり,シリンダーヘッドが高く,その上に設置されるシリンダーヘッドカバーの位置が高い。また,Fig. 5に示すように吸気ポート形状,サージタンクの関係からインテークマニフォールド上面の位置も高く上部に残された空間は狭い。 更に,SKYACTIVG3.3Tはイグニッションコイルやガソリンタンク内で気化した燃料を燃焼室へ取り込むパージシステム,またヘッドカバーにはベンチレーション経路/PCV (Positive Crankcase Ventilation) 経路を共用したオイルセパレータや吸気系と接続する換気用PCVホース,ブリーザーホースをもつため,ヘッドカバー上部に残された空間はSKYACTIVD3.3よりも狭い。このように,ヘッドカバー上及びインテークマニフォールド上のパッケージが課題であった。を一つ一つ手作業で繰り返す必要があった。SKYACTIVG3.3Tのパッケージ開発にて,この解を見出す作業は極めて複雑なものであった。以降の章では,上記課題をブレークスルーするための技術を紹介する。3. ブレークスルー技術

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