マツダ技報2023
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(1) 和田ほか:CX60の紹介,マツダ技報,No.39,(2) 志茂ほか:SKYACTIVD3.3の開発,マツダ技報,(3) 岡澤ほか:SKYACTIVD3.3の開発,マツダ技報,(4) 永尾ほか:直列6気筒エンジン組立ラインの紹介,―23―Fig. 9 Cross-Sectional Diagram of Car pp.3-6(2022)No.39,pp.21-27(2022)No.39,pp.28-35(2022)(Side Direction View)Fig. 8 Diagram Seen from Above Engine (Plan View) Fig. 8にエンジン全体を真上から見た図を,Fig. 9にエンジンと車両の断面を示す。仮にターボチャージャー下流吸気経路として,ヘッドカバー上配置を選択しなかった場合,エンジンフロント側もしくはリア側を通過させる手段が考えられる。しかし前者はエンジン直付けの4. おわりに また,2.3(2)で述べたパージシステムは従来のエンジンであれば,ヘッドカバー上やインテークマニフォールド上に配置されることが多いが,上述のインテークマニフォールド下プロテクタ内側へ内包した。近接する燃料レールとインジェクター及びそれらに接続されるハーネス,ノックセンサーなど周辺部品との緻密なクリアランスを確保することにより実現した。パージバルブシステムを従来よりも短い経路でインテークマニフォールドへつなぐことで,パッケージと機能を両立した。 このように,さまざまなシステムや部品を一つ一つ整理し,無駄な空間を残すことなく合理的にパッケージしていくことで,機能を担保しつつエンジンと車両のパッケージを高次元にバランスした。3.2 ヘッドカバー上パッケージ技術 ヘッドカバー上及びエンジンとカプセルカバー間のパッケージ検討を効率化するため,部品3Dモデルと公差値,エンジン振動データを入力することで部品周辺に必要な空間の3Dモデルを自動生成する簡易プログラムを開発した。これによりクリアランス計算や管理作業時間を70%程度削減し,検討を大幅に効率化した。 ヘッドカバー上ハーネスシステムにおいても,パッケージ開発初期から経路のコンセプトを精度高く立て,分岐位置や固定個所を具体的に定めてばらつきデータを描くことで,機能要件や周囲の必要クリアランスを明確化した。ここでも上記プログラムを活用し効率化を図ることで従来比大幅に開発工数を削減できた。また,いくつかの技術アイテムを先行してパッケージしており,将来のエンジン技術進化に対応可能としている。キャタリストと干渉し,成立しない。後者はターボチャージャー上流経路と干渉する上,エンジンと車両のクリアランスが確保できずエンジン全体を車両前方へ移動させる必要がある。これはボンネット面の上昇や車両フロントオーバーハングの延長,更には乗員の視点にも影響を及ぼすことになり,車両パッケージやデザインを大幅に変更することにつながる。これらの理由により,ターボチャージャー下流吸気経路にヘッドカバー上配置を選択した。重量物であるエンジンを車両重心に近づけるパッケージは,車両のヨー慣性モーメントの低減により運動性能を向上でき,マツダらしい人馬一体の走りの提供に貢献している(5)。 このように,一つ一つの部品は小さなものであるが,細かいエンジンパッケージの知恵や工夫が魂動デザインや人馬一体,走る歓びをサポートし,マツダブランドを支えている。 走る歓びと優れた環境性能を高次元で両立するSKYACTIVG3.3Tのパッケージ開発の事例を紹介した。ユニット内外のさまざまな課題をひとつひとつ解決し,実現したものである。 今後もマツダは独自の価値である魂動デザインや人馬一体,また人間中心のクルマ造りに求められるパッケージを進化させ,運転するたびにお客様の笑顔を生み出す商品を提供し続けていく所存である。参考文献

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