マツダ技報2023
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 CX90では,新たに直列6気筒ガソリンターボエンジンを搭載し,CX60共通のコンセプトである“高揚感”に加えて,高回転域まで途切れなく加速感が続く“伸び感”のあるエンジンサウンドの開発に取り組んだ。本稿では,CX90のエンジンサウンド開発の考え方と実現手段について報告する。―25―In the development of the engine sound for CX90, in order to convey driving pleasure to our customers, we stretch feel which is a characteristic of gasoline engines.NVH Performance Development Dept.Yukifusa HattoriAkinori MiyakeTakaya KatsuragawaKamikaze TakasakiShuhei OtsukiMinoru KoyaSaburo Kawagoe2. コンセプト1. はじめに3. 目標設定CX90のエンジンサウンド開発についてEngine Sound Development for CX90特集:MAZDA CX9005要 約 CX90のエンジンサウンド開発では,6気筒エンジンサウンドの共通コンセプトとして,トルクに対してリニアな音の変化と,干渉音の変化によって“高揚感”を呼び起こし,回転上昇に伴う加速感の続く伸びの良さを周波数上昇の変化で“伸び感”のあるエンジンサウンドを目指した。走りの開発部門も共創して,アクセルを踏み込むほどに走りと一致した意のままの運転をサポートするサウンド開発に取り組んだ。Abstractaimed to provide not only elation which is a common concept of Mazda’s six-cylinder engine sound, but also Key words:Vibration, Noise, Engine sound, Sound quality evaluation, Driver behavior, Operational エンジンサウンドは,マツダの考える意のままの走りに欠かせない要素として研究開発を行っている。近年では,人が道具を自在に扱えるメカニズムを研究し,意のままの運転とサウンドの関係を解明してきた。具体的には,MAZDA3,MX30等のスモール商品群において,ドライバーが直接扱うトルクの大きさを音で伝えることで運転操作の精度が向上し,サウンドが意のままの走りにつながっていることを証明した(1)。 CX90を導入する北米環境では,①大小さまざまな加速度をコントロールして交通流に乗ったり,追い越しなど行うシーンと,②アクセル開度一定で,エンジン回転数の上昇とともにねらいの車速まで上げていくシーンと,*1~7   NVH性能開発部 服部 之総*1桂川 貴弥*2大槻 修平*3河越 三郎*4三宅 昭範*5高﨑 神風*6神谷 稔*7大きく2つの加速シーンがある。 ①のシーンでは,加速度の違いをコントロールするために,CX60のディーゼルエンジンのサウンド開発(2)の考え方を基盤に,ガソリンエンジンのトルク特性と変速パターンに合わせて,トルクに対する音の変化と干渉音を加えることで,加速度の違いを音でコントロールして“高揚感”につなげる。 また②のアクセル一定で加速するシーンでは,車速と回転上昇に対して途切れなく加速感が続く伸びの良さを,周波数上昇の変化で感じていただき,“伸び感”のあるエンジンサウンドを目指した。 これら干渉音による“高揚感”と,回転上昇に対する周波数の変化による“伸び感”が移り変わることで,北米環境において,アクセルを踏み込むほどに意のままの走りと一致したエンジンサウンドを目指した。 ①のシーンでは,トルクに対するリニアな音の変化と,トルクに対する干渉音の変化の目標を定義し,②のシーンでは回転上昇を周波数上昇の変化の目標を定義した。

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