マツダ技報2023
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―26― dnuos gnllevel erusserpitaudoMFig. 2 Structure of the EarFig. 3 Hearing Filter(3)3.1 トルクに対するリニアな音の変化 ゆったりと一定の速度で走る場面では,アクセル操作に対してドライバーが直接感じるトルクの大きさは,音の大きさの変化で定義し,トルクに対してリニアな音の変化を定義した(Fig. 1)。 あるトルクに対して音圧が大きいと騒々しく,音圧が小さいとトルクを知覚できないため,適度な音圧レベルを定義し,その範囲の中でリニアな変化となる目標を設定した。Fig. 1 The Target of Sound Pressure Level vs Torque3.2 加速時に干渉音で感じる “高揚感” 高揚感は,上記に述べたトルクに対してリニアな音の変化に加えて,トルクに対して干渉音を非線形に変化させることで成立すると考えた。 人間の耳は,外耳・中耳・内耳の3部位から成り,内耳には蝸牛と呼ばれる部位がある。蝸牛内にある基底膜が反応した後,聴覚系はある周波数ごとに信号を振り分ける(Fig. 2)。ここには,聴覚フィルターと呼ばれる中心周波数の異なる帯域フィルター群がある。すなわち人間の聴覚は24個のフィルター群として,モデル化できる。その帯域幅は臨界帯域幅と呼ばれ,中心周波数が500Hz以下の帯域では約100Hz程度の幅で一定,500Hz以上では周波数とともに,その幅は増加していく。この聴覚フィルターの働きにより,聞いている音にどういった周波数の音が含まれているのかが分かる。この1つの聴覚フィルターに2つ以上の音が存在するときに音は干渉した音に聞こえ,音が別々の聴覚フィルターにある時は澄んだ和音に聞こえる。PTサウンドでは,この干渉音が発生すると,ゴロゴロといった音に聞こえる(Fig. 3)。 ドライバーが意をもって加速する際,和音から干渉音へ音色を変化させることで,操作に対して車からの反応の変化がはっきりと感じ取れ,クルマとの一体感が増し,高揚感につながると考えた。従って,高揚感を感じる音の指標は,“トルクに対する干渉音の変化”と定義し,音色の変化をつけるために,低-中トルク域で干渉する音を非線形に変化させることとした(Fig. 4)。Fig. 4 The Target of Modulate SPL vs Torque3.3 回転上昇とともに加速感のある “伸び感” アクセル開度一定状態での加速度は,回転上昇とともに緩やかに減少していくが,回転や車速は上昇していくため,エンジンサウンドから「聞こえる周波数」を上げていくことで,実際には低下していく加速度を,あたかも加速度を維持しているかのように感じさせることで“伸び感”を実現できると考えた。(1)“聞こえる周波数”の定義 加速中のエンジンサウンドは,多くの周波数で構成されている。この中で最大音圧は100Hz程度に相当する音となるが,エンジンサウンドとして人が感じる音の高さはもっと上の300~400Hz帯となる。この“人が感じる音の高さ”を指標化するために,最大音圧となる周波数の音と,エンジンサウンドとして感じ取れる最大周波数の音圧を線形に結び,基準線を作成した。この基準線から各周波数音の飛び出し量を算出して,飛び出し量最大となる周波数を“聞こえる周波数”と定義した(Fig. 5)。Outer EarEar CanalEar DrumMiddle EarInner EarMalleusStapesVestibular WindowBasal MembraneTympanic WindowIncustorqueSemicircular CanalsLymph FluidVestibular ScalaCochleaTympanic Scalatarget

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