マツダ技報2023
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(2)高エネルギー吸収構造 CX90は限られたスペースの中でより効率的に衝突エネルギーを吸収するために,縦置きエンジンのメリット―30―Fig. 2 Comparison of Body Structure & SuscrossFig. 3 Structure of Straight Frame2.1 ラージ商品群における前面衝突対応車体技術の 前面衝突は,エンジンルームを潰して衝突エネルギーを吸収し,乗員の傷害軽減を図るのが一般的だが,CX90は,6気筒エンジンの縦置きパワートレインとショートオーバーハングデザインにおけるクラッシャブルゾーンの確保や,PHEVによる重量増加,高電圧保護などに,多くの課題があった。CX90はこれらの課題に対し,マルチロードパスによる荷重分散,高エネルギー吸収構造及び骨格部材の高強度化という3つのブレークスルー技術によって,軽量かつ優れた前面衝突安全性能を達成した。その結果,CX90は3列シートの設定,ボディーの全長,全幅,全高の拡大によりCX60から200kg以上の車両重量の増加にもかかわらず,CX60と同じショートオーバーハングデザイン(852mm)を達成した。(1)マルチロードパス (Multi- Load Pass) による荷重分散 CX90はあらゆる方向の入力に対して乗員に加わる衝撃を和らげ,客室の変形を最小限にとどめるため,前面衝突時の入力をメイン系列(フロントフレーム)・アッパー系列(エプロン)・ロアー系列(サスクロス部品)の3つのロードパスで効率的にエネルギーを吸収する構造を採用した(Fig. 1)。更にフロントフレームからの入力は,従来のBフレームに加え,トンネルサイドやトルクボックス,アッパーロードパスに伝達するなど,各系列の入力を客室の各部材に分散させることで,客室変形を抑え乗員への直接的な被害の軽減を図った。Fig. 1 Multi-Load-Path Structure for Frontal CrashUpper LoadpathMain LoadpathLower LoadpathUpper LoadpathTorqueBOXTunnel SideBFrameUpperFront2. 前面衝突性能開発楽しさの実現,特徴である後輪駆動やエンジン縦置き方式,PHEVの大容量リチウムイオンバッテリーの床下配置などの技術と車両大型化による重量の増加に対応するため,高強度材料への置換に加え,車体骨格の結合部強化,断面形状工夫,フレームのストレート化による軸方向への荷重の伝達率向上により,軽量化と高い衝突安全性能の両立に取り組んだ。進化を生かし,メインロードパスのクラッシュボックスからBフレーム,ロアーロードパスのクラッシュボックスからサスクロスなど,骨格部材を最大限ストレート化することで荷重の伝達率を上げ,質量効率の良い骨格を実現した(Fig. 2)。 特に,フロントフレーム部では長軸を安定的に軸圧縮変形させる課題に対し,断面中心のストレート化や変形周期コントロールの節,フレーム前部と後部で断面構造を変える稜線徐変構造を織り込むこと(Fig. 3)で達成し,エネルギー吸収効率を倍増させながら省スペースでのエネルギー吸収効率と軽量化を両立させた。これらの技術により,CX90はひとつのボディーでICEとPHEVを搭載可能な構造としつつ,高い前面衝突安全性能と軽量化を実現した。 また,CX90はCX60からの車両重量の増加によりエネルギー吸収量を更に高める必要があるが,CAEによる最適化スタディにより,フロントフレームやサスクロスの必要最小限の強化で対応し,フロントフロア,サイドシルなどにおいて,CX60と部品共通化を最大化してコスト低減にも貢献した。

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