マツダ技報2023
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(3)骨格部材の高強度化 前面衝突時の客室エリアの変形抑制と軽量化のため,Aピラーに冷延1470MPa級の超高強度鋼板を,ヒンジピラーとダッシュクロスメンバーにはホットスタンプ材をマツダ車として初めて採用し,高強度化を図った(Fig. 4)。―31―Fig. 4 Body Material of High Tensile2.2 スモールオーバーラップ前面衝突モードにおけ スモールオーバーラップ前面衝突とは,相手車もしくは障害物と少ないラップ量で衝突するモードであり,アメリカの市場事故の約20%(1)の割合を占めている。このモードはフレームなどの骨格部材で効果的に衝突エネルギーを吸収できず,客室が大変形する傾向にあり,乗員死亡重傷者軽減のためにはこのモードへの対応が重要であり,IIHSはこのスモールオーバーラップ前面衝突を模した評価を採用している。 CX90では,スモールオーバーラップ前面衝突と軽量化との両立化のために,以下のように車両挙動に注目して構造化を図った。Fig. 5に示すように,キャビンへの入力が大きくキャビン強度を高くする必要のあるエンゲージ挙動(バリアに車両が引っ掛かる挙動)に対して,車両を横方向に動かしキャビンへの前後方向入力が抑えられ車体減速度が小さくできる傾向のあるグランスオフ挙動(バリアに対して車両がすれ違う挙動)を実現して安全性の向上と軽量化の両立を図った。Fig. 5 Engage and Granceo■ ModeFig. 6 Suspension Deformation Mode of SmalloverlapFig. 7 Side Impact Moving Deformable Barrier for IIHS Bピラーは,Fig. 8に示すように乗員の生存空間よりも下部に屈曲点を設定しており,これより下側を変形させることで,衝突エネルギーを吸収し,乗員生存空間を確3. 側面衝突性能開発つなぎ,アルミ鍛造ロアーアームからサスクロスメンバー経由で左右方向へ荷重伝達(Fig. 6 Part2)を行い,衝突初期から車両を横にずらす入力を継続的に与えてグランスオフ挙動を実現した。 側面衝突は,客室の変形を抑えつつ,ドア外板から乗員までの狭い空間で,衝突エネルギーを吸収する必要がある。CX90では,条件が強化されたIIHSの新しい側面衝突に対応することが課題となった(Fig. 7)。新プロトコルは,衝突エネルギーが従来比約80%増となり,車体変形を抑える中心的な役割を果たしてきたBピラーの高強度化に加え,ドア内のインパクトバーによるマルチロードパス構造を採用することで,高い側面衝突安全性能を実現した。るグランスオフ挙動の実現 具体的には衝突初期から左右方向に荷重を発生,持続させるため,①ペリメータ ビームを左右方向に延長し,衝突時の荷重をペリメータ ビームからサスクロスメンバー経由で左右方向へ伝達(Fig. 6 Part1)と,②サスクロスメンバー後方の左右間をトランスバースメンバーで

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