マツダ技報2023
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―37―Fig. 5 Film StructureFig. 6 Align Aluminum FlakesFig. 8 Volumetric Contraction E■ect3.3 ソウルレッドクリスタルメタリック ソウルレッドクリスタルメタリックは,ソウルレッドプレミアムメタリックから“鮮やかさ”と“深み”の更なる進化を追求し開発した。ねらいの光学特性を実現する塗膜構造はソウルレッドプレミアム,マシーングレーで培った反射層と吸収層の機能配分を見直し,再配置した構造となっている(Fig. 9)。Soul Red Structure Machine Gray Structure Fig. 9 Design of Film StructureFig. 7 Film Structure of Machine Gray Premium Metallic 課題は,アルミフレークをねらったとおりに制御することであった。アルミフレークの水平な並びを制御するために,下地となる吸収層の塗料粘性や塗料粒子サイズを最適化し,平滑さを向上させた。また,アルミフレークの段差及び隙間を制御するために,塗膜が乾燥工程で一気に収縮するよう体積収縮率を向上させた塗料を開発した(Fig. 8)。Transparent layer Reflective layer Absorption layer Reflective & color layer Transparent layer Reflective layer Clear coat E-coat (a) Conventional Metallic Color Clear coat E-coat (b) Soul Red Premium Metallic Conventional Metallic Color Clear coat E-coat Metal Surface Space Reflective layer Absorption layer Highed Difference Clear coat E-coatFilm Surface Machine Gray Premium Metallic 顔料やアルミフレークの総量を増やすと,耐チッピング性や耐候性を担う樹脂が相対的に減るため塗膜品質が低下する。また,顔料に対してアルミフレークを増やすと鮮やかさは失われていき,アルミフレークに対して顔料を増やすと陰影感は失われるという相反関係に陥る。そのため,1層のベースコート塗膜で,ハイライトの鮮やかさと陰影感を両立させるのは困難であった。 そこで,アクアテック塗装で培った塗膜の機能配分設計技術を元に塗膜構造を見直し,発色機能と反射機能を2層に分離することでこれを解決した。具体的には,第1ベースコート層はハイライトでの強い反射と強い陰影感が出る高輝度アルミフレークを含んだ反射層,第2ベースコート層は鮮やかな赤を発色する高彩度赤顔料を含んだ半透明な発色透過層とした(Fig. 5(b))。入射した光は第1ベースコート層の高輝度アルミフレークで反射され,反射した光は第2ベースコート層の透過層を通過することで,ハイライトでの鮮やかな赤の発色と,シェードでの陰影感が実現できた。 また,圧倒的な高意匠を具現化した匠塗カラーの開発においては,デザイン意図をそのまま実用塗膜に変換するため,デザイン意図をエンジニアが理解し,物理特性へ変換,塗膜設計を行い,その実現のための技術開発を同時に行うというプロセス革新を行った。このプロセス革新が匠塗の実現に対し,技術的な側面に加えて極めて重要なファクターであり,これは以降の匠塗カラー開発においても一貫して継続している。3.2 マシーングレープレミアムメタリック マシーングレープレミアムメタリックは,「機械が放つ精緻な美しさの追求」をテーマとし,“緻密な金属質感”と“深み”の両立を目指し開発した。“緻密な金属質感”を,面で光る潤いのある鉄の黒光り感ととらえ,必要な反射特性と表面構造に落とし込み,塗膜構造を決定した。具体的には,ソウルレッドと同様にベースコート層は2層に機能分離した上,金属表面の微細な凹凸感をアルミフレークの水平な並びと段差で表現し(Fig. 6),黒光り感をアルミフレークの隙間から漆黒顔料を投入した吸収層(黒色カラー層)が覗くことで表現する塗膜構造とした(Fig. 7)。

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