マツダ技報2023
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―38―Fig. 12 Dispersity of Aluminum FlakesFig. 10 Film Structure of Soul Red Crystal Metallic3.4 ロジウムホワイトプレミアムメタリック ロジウムホワイトプレミアムメタリックは,「金属質感と白さの両立」をテーマとし,“白くなめらか”,“緻密な金属感”,“艶やかな潤い”の表現を目指し,デザイン意図を物理特性に落とし込み,塗膜構造を決定した(Fig. 11)。Fig. 11 Film Structure of Rhodium White Premium Metallic 第1ベースコート層は拡散反射層,第2ベースコート層はアルミフレークを含む極薄の反射層とする構想とし,第1ベースコート層の白色光をアルミフレークの隙間から反射させることで金属感と白さを両立させるねらいとした。4. アーティザンレッドプレミアムメタリック4.1 デザイン意図 意匠と技術を進化させてきた匠塗カラーは誕生から10年の節目を迎え,更なるブランドの成熟・深化をメッセージに込め,より上質で成熟した大人の世界観を表現する赤として,匠塗カラー第4弾となるアーティザンレッドプレミアムメタリックを開発した。「最高峰の職人技で生み出される熟成されたワインのような赤」というテーマの基,ハイライトは“透明感が高く鮮やかな赤”に,シェードでは深く濃く変化する“濃厚さ”の両立を追求した。4.2 物理特性変換と塗膜設計 “透明感の高い鮮やかな赤”と“濃厚さ”を両立させるため,匠塗開発プロセスに基づき,デザイン意図を物理特性に落とし込み,必要な3つの光学特性に変換した(Fig. 13)。①高彩度な赤の反射特性②ハイライトからシェードにかけての極端な反射の減衰③金属のような反射強度分布 ここで①,②,③を定量的に評価するための指標を設けた。①と②の評価指標として,ハイライトとシェードの彩度変化を示す「彩度陰影感」という指標を作成した。Transparent layer Reflective & Absorption layer Reflective layer Diffuse reflective layer Clear coat E-coat Clear coat E-coat Good Poor  ここでの課題は2つあり,(1)“透明感ある鮮やかな赤”を実現する透過波長特性,(2)“更なる深み”を実現する反射特性である。(1)に対しては,既存の赤顔料の組み合わせでは実現が難しく,(2)に対しても従来のアルミフレークではシャープな反射強度が得られない上,単純にソウルレッドとマシーングレーの塗膜構造を重ね合わせたとしてもベースコート塗膜が透過層,反射層,吸収層の3層構造となり塗膜数が増えてしまう。 (1)の課題に対し,透過層の赤顔料を改良することで解決した。具体的には,赤顔料をナノサイズまで小さくし顔料表面で乱反射する光を抑え,ピュアな赤の波長のみを反射する顔料を新たに開発した。 (2)の課題に対し,アルミフレークの改良と,反射層と吸収層の機能を集約することで解決した。まずアルミフレークについては,従来よりも表面の平滑性を向上させ,よりシャープな反射強度をもつ高輝度アルミフレークを開発した。次に塗膜層の集約については,アルミフレークの反射を阻害することなく光を吸収する光吸収フレークを新規に開発し,反射層に投入した。 これによりハイライトでの“透明感ある鮮やかな赤”と,シェードでの“深み”を実現した(Fig. 10)。このようにソウルレッドクリスタルメタリックの開発では,これまで培った機能分離・集約技術に加え,原料レベルの開発にも着手し技術を進化させた。 課題は,反射層中のアルミフレークの水平な並びと隙間の制御であり,アルミフレークを水平に並べるため,マシーングレーで用いた体積収縮制御技術を更に進化させた。具体的には,塗料中の固形分を少なくする塗料設計を行い,体積収縮率をマシーングレーの約4倍まで拡大することで反射層のアルミ配向制御を可能とした。また,アルミフレークの隙間を制御するため,アルミフレークの分散性を向上させた塗料を開発し,そのアルミフレークを均一に分布させた塗膜にする塗装工法を導入した。具体的には,塗料中のアルミフレークと樹脂や溶剤,添加剤などの成分との相互作用を最適化する塗料設計を行い,かつ塗装機によって噴霧された塗料中のアルミフレークが均一な分布になるよう塗装パラメーターを制御することによって,アルミフレークの分散性を向上した。均一に分布させる塗り方は,膜厚シミュレーション技術を活用し,塗装ロボットの動作設計を最適化することで解決した(Fig. 12)。の開発

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