マツダ技報2023
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―42―④Forming completion ③The lowest point Fig. 2 DEA Measurement Issues2. 金型相対精度向上の取組Point measurement ① Materials injectionCAD clearanceFig. 3 Examples of Application of Countermeasures3. 絞り工程における成形挙動制御の取組3.1 絞り工程とその課題 プレス成形の絞り工程の成形過程を(Fig. 4)に示す。まず,①パネルをブランクホルダーにセットし上型を降下,②クッションパットからの成形荷重によって上型とブランクホルダーにてパネルをホールドして張力を加える。③その状態で上型,ブランクホルダーとも降下しパネルを下型に押し当て下死点で成形完了となる。上述のパネルは,ホールド状態による圧力によってパネルの流入をコントロールして張力を発生させる。この状態で成形Rによる曲げ応力が加わることにより塑性変形し形状が定まる。Fig. 4 Forming Process of a Drawing MoldActual clearance②Holding state 発)をはじめとする金型製作革新の取組により効果を出してきた。しかし,2)金型相対精度と絞り成形,曲げ成形における3)成形時の挙動制御技術を向上させる必要があり,これらの技術課題について,CX90のサイドフレームで取り組んだ事例を紹介する。 機械加工及び磨きの高品質化により,金型上下型単品での形状精度は向上してきた。一方で,金型は上下型一対で構成されるため,上下型構造部の誤差の累積が形状精度に影響する。そのため,金型組付け後の上下型の相対精度保証も単体精度同様に重要である。この上下型の相対精度を保証する際,デジタル上で金型の位置合わせを行い,実型での調整量を算出するベストフィットという手法を用いている。現物での確認,調整ではなくデジタル上で行うことで大幅な工数減を実現している(1)。 ベストフィットでは,上型/下型をそれぞれ個別に計測し,その座標データをPCに取り込み,上下型の形状クリアランスが最適となる相対位置を算出する。この座標計測にこれまでは接触式3次元測定機を使用してきた。しかし,接触式3次元測定機は離散的な点測定であり,形状面の連続的な素性が把握できない(Fig. 2)。そのため,現場作業者による切削調整が必要な箇所が生じ,高精度に仕上げた形状面を一部崩していた。よって,上下型の形状クリアランス精度のばらつきが発生しない金型合わせの手法に変える必要があった。 そこで非接触式3次元測定機を活用することにした。非接触式3次元測定機は形状面全体を連続して測定することが可能な一方で,撮影時の環境などの外乱により測定精度のばらつきが生じるため,魂動デザイン表現に求められる金型精度に対して測定精度が不足していた。上下型の相対位置を高精度に予測するためには,測定精度ばらつきを抑制し外乱に左右されない測定条件の設定が必要であった。測定条件を適正化するために,非接触式3次元測定機の測定原理から特に影響があると考えられるパラメーターを抽出し寄与度の評価を行った。寄与度の大きかった対象物との距離やシャッタースピード,ハレーション防止剤の塗布適正化により測定精度を42%向上させ,要求精度を満足させた。これらの取組により,形状面全体を踏まえたベストフィットが可能となった。結果として,ねらいとなるCADデータに対して,魂動デザイン再現に必要な上下型の相対精度が実現できた(Fig. 3)。 しかし,現状の絞り工程では,金型改善段階においてパネルデザイン形状に対して意図しない凹凸(以下,シワと記載)が頻発している。このシワによって光のリフレクションが急激に変化してしまい,魂動デザインの面の塊感(連続)を損なうため,金型の改善が必要となる。シワの発生の状態はパネル形状などの特性によって車種ごとに発生の仕方が異なっており,匠作業者でも複数回の改善によって品質を造り込む高難易度の作業である。 そこで,CAEを活用して匠の作業者の改善におけるノ

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