マツダ技報2023
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―49―8C型REは,同程度の出力のレシプロエンジンと比べ,コンパクトである。 そのため,この8C型REを,薄型で高出力なジェネレーター,最高出力125kWを発生する高出力モーターと組み合わせて同軸上に配置し一体化することで,室内空間などを犠牲にすることなくモータールームに搭載することを可能とした。そして,このコンパクトな電駆ユニットと,17.8kWh※1のリチウムイオン電池と50Lの燃料タンクを組み合わせることにより,普段はBEVとして使える107km※2のEV走行換算距離(等価EVレンジ)をもちながら,更なる長距離ドライブも,8C型REによる発電で電欠の不安なく運転を楽しむことを可能とした。(2)電気を持ち運ぶ―給電機能 電化製品への給電を可能とする「V2L (Vehicle to Load)」に対応させた。荷室に配置した1500Wまで使える電源コンセントと,日本仕様では可搬型の外部給電器も使用できる。 近年災害時におけるバッテリー搭載車による給電機能活用の議論が活発化しており,日本仕様においては「V2H (Vehicle to Home)」にも対応させた。クルマから建物に直接電力を供給することが可能となり,万が一の停電時にも普段と変わりなく自宅で電気を使用することができる。17.8kWh※1のバッテリーが満充電であれば一般的な家庭の約1.2日分※3の電力を,また燃料が満タンであれば8C型REでの発電と合わせて約9日分※3の電力供給が可能である。(3)ドライバーの使用用途に対応する選択式の3つの走 MX30 Rotary-EVでは,走行シーンや用途に応じてドライバー自身が選択できる「ノーマルモード」「EVモード」「チャージモード」の3つの走行モードを設定した。a. ノーマルモード ドライバーの操作に応じた加速性能をいつでも提供するモードとしてとして設定した。バッテリー残量が十分あればEV走行が可能で,その時のバッテリーの状態でまかなえる以上の出力が要求された場合には,8C型REで発電し,その電力を用いてこの車がもつ最大の加速性能を発揮できる。b. EVモード バッテリーに貯めた電力により基本的にBEVとして使用するためのモードとして設定した。バッテリー残量がなくなるまでEV走行が可能で,ドライバーがアクセルペダルを深く踏み込んだ場合(一般的なAT車におけるキックダウン)は,8C型REによる発電で必要な加速性能を確保できる。c. チャージモード 夜間の住宅地などBEVとして静かに走りたい時や,アウトドアでの給電機能の使用などに備えてバッテリー残量を確保しておきたい時に使うモードとして設定した。行モードバッテリー残量は10%単位で任意に設定が可能で,8C型REを用いた発電コントロールにより,設定したバッテリー残量を維持できる。※1ᅠ自社調べ※2 国内WLTCモードでの国土交通省審査値。※3 1日の一般的な家庭での使用電力量を基準にした場合の試算。V2H機器等の変換効率は除く。3.3 KV#3 デザインコンセプト「Human Modern」 発売以来,MX30は「Human Modern」をデザインコンセプトに,大胆な塊そのものがもつ美しさを際立たせるため,シンプルな立体構成に徹したエクステリア,フリースタイルドアによる身軽さを体現したキャビンデザイン,親しみやすい表情,抜けの良い立体構成により「開放感に包まれる」インテリア空間,そしてサスティナビリティをテーマとした個性的な素材使い等,今までにない新しいアプローチにより,魂動デザインの可能性を示してきた。 環境に配慮した内装素材,フローティングコンソール,そしてタッチパネルディスプレーなどといった室内空間を演出する基本的な要素はそのままに,MX30 Rotary-EVの追加によって,よりアクティブなライフスタイルをサポートできるようになったことをデザイン面でも表現するため,仕様のバリエーションを広げた。 今回のデザインを構想するにあたっては,「つねに自分らしくニュートラルでバイタリティにあふれ,環境問題など社会課題の解決にも積極的な現代のユーザーへのアプローチ」をコンセプトとして掲げ,「Human Modern」の新たな仕様を用意した。(1)エクステリアアイテム MX30では,企画スタート時点で,全てのパワートレインを想定した基本のデザインテーマを設定した。MX30 Rotary-EVでは,この基本テーマを崩さずに,技術をメッセージする2つのアイテムを採用した(Fig. 1)。 1つ目はパワートレインの存在をアピールするバッジ類である。リアにはe-SKYACTIV REV専用バッジを,フロントフェンダー上にはREの形状中央に発電を意味する「e」の文字をモチーフをとしたバッジを配している。これらのバッチには,自らエネルギーを生み出すイメージのオレンジの差し色を用い,独自の電動化のテーマカラーとしている。 2つ目は,専用の空力性能に特化し性能をサポートするデザインのアルミホイールである。MX30 EV MODELのアルミホイールも空力を重視したものであったが,この新デザインホイールは最新の空力解析を用いて,リム周辺の風の流れの最適化と軽量化を両立する形状にした。カラーはブラックベースの切削処理とすることで,ストレートでシャープにテクノロジーを表現している。の新たな仕様

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