― 1 (1)直噴化によるノッキング抑制 Fig. 5に吸気系上流(スロットル直下)噴射と直噴を織り交ぜた場合と,直噴のみでの点火時期に対する正味燃料消費率の関係を示す。吸気系上流噴射と直噴の組合せは,同じ点火時期において未燃燃料が少なく燃費は良いが,ノッキングの影響で点火時期を進角できない。一方で,直噴は高圧に燃料噴射することで燃料の気化霧化を促進し,気化潜熱により燃焼室内を冷却する。これにより,ノッキングを抑制し燃費最良点になる点火時期(以降,MBT:Minimum Advance for Best Torque)まで点火時期の進角が可能で燃費が向上する。 また,実用の運転シーンでは燃料性状のばらつき,高外気環境,EGRを導入できない環境などノッキングに対して厳しいコンディションが存在するが,直噴にすることで幅広い領域でノッキングを回避しつつMBTにセット可能となり,実用的な燃費向上にも貢献している。(1)1―54― Fig. 6に示すのは,燃焼解析におけるノッキング発生時の温度分布の結果である。リーディング側(以降,L側)における主燃焼による温度上昇とは別にトレーリング側(以降,T側)でノッキング発生による温度上昇が認められる。これに対して,混合気配置の自由度の高い直噴では,噴射タイミングを最適化し,Fig. 7の燃焼室断面に示すようにノッキング発生部に濃い混合気を配置し冷却することで,ノッキングを抑制した。T SideCFSB]h wk/ g[ KKnnoocckkiinngg -30.0+GPF1ottoTable 1 Specifications for EuropeTheoretical Thermal E■ciency of Otto CycleFig. 5 Net Fuel Consumption for Di■erent Injection Fig. 6 Temp. Distribution when Knocking OccursSystemIInnttaakkeeUUppssttrreeaamm IInnjjeeccttiioonn 8844%%++DDiirreecctt IInnjjeeccttiioonn 1166%%DDiirreeccttIInnjjeeccttiioonnSSeettttiinngg AArreeaa33000000rrppmm HHiigghh LLooaaddSSeettttiinngg AArreeaaKKnnoocckkiinnggEngineWay to UseccDisplancemente: EccentricityR Generating mmRadiusb: WidthCompression RatioMax. PowerkW (PS)/rpmMax. TorqueNm (kgfm)/rpmFuel Injection SystemIntake TypeExhaust TypeEmission SystemEGR SystemIgnition System13B (2008MY)For Power GenerationFor Drive654×2830×1e=15R=105b=80e=17.5R=120b=7610.0:111.9:1151 (205)/ 7,500 (Std.)211 (21.5)/ 55 (74.8)/ 4,500117 (11.9)/ 5,5004,000Port InjectionDirect InjectionSide/3 PortSide/2 PortSecondary Air Side/2 PortSide/2 PortSystem (ElectricA/P+Direct CatalystACV) UF3Way (2 BED)Cooled EGR2 Plug1 Plug8C BBaaddGGoooodd3. 8C型ロータリーエンジンの主要諸元 13B型と8C型の主要諸元をTable 1に示す。8C型では前述の技術目標を実現するために,大幅な燃焼改善に挑戦した。13B型より圧縮比を高め,燃料供給を直噴化し,Cooled EGRシステムも採用した。また,骨格を決めるディメンション(エンジン寸法)を一新するとともに,発電機専用ユニットとして排気量を最適化した。4. 燃費・エミッションの改善技術4.1 高圧縮比を実現するノッキング回避技術 高圧縮比化はオットーサイクルの理論式(1)から熱効率の向上にも寄与し,高膨張比により排ガス温度も低減するが,ノッキングを誘発させるといった課題がある。 8C型では,燃焼室内の冷却効果のある直噴と冷却した排ガスを吸気に再循環させるCooled EGRシステムを採用し,ノッキングを抑制した。Cooled EGRは,ノッキング回避効果の他,比熱比の向上効果や燃焼温度の低減による冷却損失や排ガス温度の低減効果があり,更に部分負荷域ではポンピングロスの低減といった多岐に渡る燃費向上の効果が得られる。4500rpm High LoadRotor Rotation DirectionTemp.[K]25002000150010005g/kwh-20.0-10.00.0Ignition Timing [deg.aTDC]10.020.0L SideKnocking η: Thermal E■ciency ε: Compression Ratio κ: Specific Heat Ratio
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