マツダ技報2023
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 8C型エンジン/ユニットとしては,回転系部品の構造を見直してエンジン軸端部長さを従来の13B型エンジン並みに抑えることで,上記のレイアウトへ収めた(Fig. 12)。―62―Motor Generator Fig. 11 Buttock Line Frame Direction LayoutFig. 12 Comparison of Shaft Lengths(1)エンジンフロント側軸長(Fig. 11 A区間) ロータリーエンジンでは,ローターの偏心質量に起因した不釣り合い慣性力を解消するために,ローターを挟んだエキセントリックシャフトの前後に釣り合いおもり(フロント側はバランスウェイト)を配置している。従来の2ローター・エンジンの場合,前後のローターの位相を180°ずらすことで,この不釣り合い慣性力をキャンセルすることが可能であるが,1ローター・エンジンの場合は,この不釣り合い慣性力を前後の釣り合いおもりで解消する必要があるため,8C型エンジンのバランスウェイト軸長は13B型比で1.5倍に拡大している。 そこで,エキセントリックシャフト内にあるローター冷却用のオイルジェットの位置をローターのリア側配置とすることでシャフト内油路をエンジン中心へ押込み,フロントノーズ長を約15%短縮した。(2)エンジンリア側軸長(Fig. 11 B区間) 8C型エンジンでは燃料の供給方式として直噴式を採用したため,エキセントリックシャフトのリア側に新たに燃料ポンプをチェーン駆動するためのスプロケットが追加となり,リア軸長の延長課題があった。 従来の13B型エンジンのシャフトリア側にはテーパー勘合でフライホイールを締結していたが,8C型エンジンでは,テーパー勘合部とはずみ車部を分離し,テーパー勘合部とスプロケットを一体化,はずみ車部はスプ8C Diamond Washer Fig. 13 Shortened Shaft Length (B Section)3.1 ロータリーエンジン構成技術の改善(1)オイルシール内圧低減 Fig. 14 にローター断面及びオイル輸送経路を示す。ローターの側面には,ローター内部を冷却しているオイルの燃焼室への漏れに起因するオイル消費を抑制するため,リング状のオイルシールを設けている。ローターが大きくなったことにより,オイルシール径が拡大しシール長が増加した。加えて,偏心して回転するオイルシール内側のオイルに作用する遠心力の増加や,オイルのかき込み時に生じる動圧による圧力上昇により,オイル漏れ量の改善が課題となる。この対策として,オイルシール溝底からローター内部へオイルを排出するリリーフホールを設けた。穴位置はローター内部の冷却オイル循環の主経路を外して選定することで,オイルシール内部の圧力低下とオイル漏れ低減効果を得た(Fig. 15)。Flywheel Sprocket Fig. 14 Rotor and Oil TransportFig. 15 Oil Leakage vs Engine Speed3. 織り込み技術ロケットとの間にダイヤモンドワッシャーを挟み込むこと(Fig. 13)で必要なトルク容量を確保した上で軸方向に短縮でき,リア軸長の延長を約40%から30%へ抑えた。

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