マツダ技報2023
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―70―Key words:Heat engine, Rotary engine, Wear resistance, Thermal spray, HVOFAs one of the options for realizing both driving pleasure and excellent environmental performance, Mazda has to charge the battery. The conventional RE has cast-iron side housings which have been required to be replaced with aluminum for lighter weight and higher performance, but the aluminum side housing needs wear-resistant coating on its sliding surface to secure durability. We therefore developed High Velocity Oxy-Fuel (HVOF) thermal spray technology and verified the e■ects of the influential factors on its coating quality and required functions, while minimizing the cost and investment through a series of verifications. This paper reports our initiatives aiming to put the technology into production.Powertrain Production Engineering Dept.Shinji YamamotoYuichiro IkedaPowertrain Production Dept. No.2Yukitoshi NakataHirokazu TakahashiTakaho KishidaYasuhiko Okada1. はじめにDevelopment of HVOF Thermal Spray Technology for Aluminum Side Housing特集:MAZDA MX30 Rotary-EV13 走る歓びと優れた環境性能を両立させる選択肢の一つとして,マツダは独自のREによる発電と外部電源によりバッテリーを充電し,モーターで駆動するプラグインハイブリッド車を開発し,お客様に提供している。軽量,コンパクトなREの特性を生かしたe-SKYACTIV REVによるマツダ独自の優位性を確立するには,既存のREの*1~5  パワートレイン技術部 要 約 マツダは走る歓びと優れた環境性能を実現する一つの選択肢として,マツダ独自の軽量,コンパクトなロータリーエンジン(以下,RE)によるバッテリーへの充電を可能とするe-SKYACTIV REVを開発し,お客様に提供している。従来のREでは,その大型構成部品であるサイドハウジング(フロントハウジング及びリアハウジング)は鋳鉄製であり,ユニットの軽量化による更なる運動性能と環境性能を追究するためには,この2部品のアルミニウム(以下,アルミ)への材料置換が重要課題となっていた。しかし,硬度の低いアルミでは,回転運動するローターに装着されたシール部材の摺動に対する耐久性が得られないため,高い耐摩耗性を有する硬化層を摺動面にコーティングする必要がある。そこで,摺動面の耐摩耗性を確保するコーティング手段として,高速フレーム(以下,HVOF)溶射技術を適用した。本技術の適用にあたり,摺動面に要求される機能と品質の関係,溶射皮膜の品質特性に影響する要因とそのメカニズムを明確にした。これらの検証を積み重ね,技術を手の内化することにより,要求機能,品質を確保しつつ,必要最小限の投資,コストで量産適用を実現した。本稿ではこの取り組みについて報告する。Abstractdeveloped and released e-SKYACTIV REV that enables Mazda’s unique light-weight compact Rotary Engine (RE) 山本 真司*1中田 行俊*2髙橋 宏和*3池田 雄一郎*4岸田 高穂*5岡田 保彦*6更なる軽量化が必要であり,その最重要課題として,主要構成部品であるサイドハウジングの材料を従来の鋳鉄からアルミに置換することが求められていた(Fig. 1)。 フロントハウジングとリアハウジングのアルミ化により,15kg以上/台の軽量化が可能になり,これによってマツダ独自のREによる電動駆動ユニットをより高い走行性能,環境性能とともに実現することができる。*6  本社工場第2パワートレイン製造部 アルミサイドハウジング実現に向けた 高速フレーム溶射技術の開発

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