マツダ技報2023
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―72―Fig. 6 E■ect of Degreasing on Bond StrengthFig. 7 E■ect of Surface-roughening Type on Bond Fig. 8 Bond Strength without Degreasing or StrengthRoughening3.1 量産工程(前処理)の仕様決定 Fig. 4に一般的に考えられている溶射とその前後加工の工程を示す。前工程として摺動面をフライス加工し,中間洗浄を行った後,溶射工程に入る。後工程では,皮膜の仕上げ研削等を行い,リークテスト工程にて品質を保証した後に,組立工程に送られる。通常の溶射工程では,まず脱脂洗浄して基材表面の油分や汚れを完全に除去した後,ブラスト等により表面に細かな凹凸形状を付与した上で溶射を行うことにより,溶射粒子を食い付きやすくすることが推奨されている。Fig. 4 Assumed HVOF Spraying Process for Side Housing そこでこれらの前処理について,摺動面に求められる機能(耐剥離性)を確保する上で,どのような仕様でなければならないか,あるいはそれらの前処理が本当に必要かどうかという視点で,必要最小限の工程を見極めるために,前処理の仕様を振らした溶射テストを行い,密着強度への影響を検証した。密着強度はJIS H 8402に準じて,試験片に溶射し,皮膜表面に強力な接着剤で相手材を接着し,引張試験で評価した(Fig. 5)。 Fig. 6に脱脂洗浄工程で密着強度に影響すると考えられる要因を振らして溶射し,密着強度を測定した結果を示す。メーカー推奨の脱脂洗浄をした表面状態と,脱脂洗浄することなく,前加工工程の中間洗浄液や切削クーラントが付着したままの表面状態で,粗面化処理を行わずに溶射し,密着強度を評価した。その結果,全ての条件において接着剤で破断し,皮膜の密着強度は規格を満足することを確認できた。 また,Fig. 7に粗面化工程の仕様を振らしたテストの結果を示す。メーカー推奨のブラスト面のほか,旋盤面,フライス面,溝加工やアンダーカット形状を加工した面を評価したが,これら全ての条件においても規格を満足することを確認できた。Fig. 5 Bond Strength MeasurementPre-machining ProcessFace-milling Inter-mediate WashingDegreas-ing and CleaningSetting MaskingThermal Spraying ProcessFinish-grinding ProcessCooling Surface Roghen-HVOFSprayingand Remov-Finish-grindinging(Blasting)ing MaskingFinal Washing and Leak Test3. 課題解決に向けた取り組み 上記の結果を基に,脱脂洗浄,粗面化処理を行わず,フライス加工したままの状態でN増しテストを行った結果,全て接着剤で破断し,なおかつ規格に対し,十分な密着強度を確保できることが分かった(Fig. 8)。更に試作品の耐久評価を行った結果,皮膜の剥離等の発生はなく,機能上問題ないことを確認した。 以上の検証結果から,溶射用の前処理工程は不要と判断し,脱脂洗浄と粗面化工程を追加することなく,前工程のフライス品へ直接溶射することに決定した。これら2工程を不要としたことで,新工法に伴う設備投資をミニマムに抑えることができた。3.2 商品機能の確保(機能限界の見極め) これまでに社内で経験のない工法を量産適用するにあたり,お客様に提供する商品機能を確実に保証するには,機能限界を明確にし,新工法で得られる皮膜がその限界値に対してどれだけのマージンを確保できているかを把

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