マツダ技報2023
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2点と異なる場合,つまり寸法と密度のばらつきである。 ローターはFig. 3に示すとおり外郭面に全て機械加工が入る一方,全体の表面積の半分近くは鋳肌面で,その大部分はNo.1,2中子を転写して形成する中空部が占める。また,機械加工工程では,コンベックスメジャーを使う際,押し付けた先端を基準(0mm)として長さを測るように,素材の基準面を治具や定盤に押し付け,ここを基準とした寸法で加工するが,8C型ローターは基準面全7か所(軸方向3か所,周方向1か所,径方向3か所)を,全てNo.1中子を転写して形成する面に持たせている(Fig. 4)。そのため,No.1中子の出来栄えが鋳肌・加工面どちらにも影響し,ローター全体の寸法ばらつきの主要因となる。―78―Fig. 3 Casting Surface and Machining SurfaceFig. 4 Machining Datums for RotorsFig. 2 Sand Molds and Casting Design3. アンバランスの主要因と現状の対応Sand molds No.3 Core No.2 Core No.1 Core Master mold Casting design Sprue runner Gray: machining surface Yellow: casting surface Green: cross section Recess Material Circumferential datum Radial datums Axial datumsNo.1 core  鋳造工程では,溶かした金属(溶湯)を砂で作る鋳型の空洞に流し込み,冷却後に凝固した素材部を取り出し,付着した砂等を取り除いて素材を製造する。ローターにはシェルモールド造型法を採用しており,270~300℃に加熱した金型の空隙部に,樹脂を珪砂にコートした砂を吹き込み,100℃付近で一旦軟化した樹脂が熱硬化することで砂粒同士を結合させて鋳型を作る。これらは数ピースに分割されており,立体パズルのように組み合わせて鋳型を組んで空洞部を形成し,そこに流し込まれた溶湯が冷却されると同時に鋳型は加熱され,樹脂が炭化し崩壊することで凝固した素材を取り出しやすくしている。 ローターの鋳型はFig. 2に示すように,外郭面を形成する主型(Master mold)の中に,中空部や燃焼室の凹み形状を形成する中子(No.1~3 Core)を勘合しセットする。主型1段あたり素材2個分の空洞を設け,それらを3段に重ねて湯道(Sprue runner)を貫通させることで一式の鋳型から6個の素材が取れる構造としている。 アンバランスは,回転する物体の重心と回転軸のずれ量(以下,偏重心距離)に質量を乗じたもので,g・mmという単位で表わされる。アンバランスがあると,それに角速度の二乗を乗じた遠心力が発生し,異音や振動の原因となる。ローターは設計モデル上,丸みを帯びた正三角形であり,ある点の質量は120°ごとに回転させた位置の2点と釣り合い偏重心距離を0としているが,実際は製造ばらつきで完全には釣り合わない。その要因は,形状が設計モデルと異なる場合と,同じでも重量が他の 球状黒鉛を晶出したダクタイル鋳鉄の密度は,黒鉛面積率や基地組成等の金属組織と,凝固収縮巣等の欠陥により定まる。それらは溶湯の冷え方に大きく影響されるため,120°ごとの位置の冷却速度ばらつきが密度ばらつきの主要因となる。 これらから生じるアンバランスへの対応として,機械加工工程では,加工後にインターナルギアを組み付け,軸中心に回転させて重心の位置と質量を計測し,ギア・反ギア面両方のアンバランス量と角度を全数算出している。規格を満足しない場合は,Fig. 5に示す各頂点の調

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