マツダ技報2023
9/203

―1―Naohito Saga2030 VISIONに向けてToward the 2030 Vision マツダは創業以来平和都市広島に根差す企業である。今年G7広島サミットが開かれたことを契機に,私自身もこの意義を深く考え直す良いきっかけとなったと考える。創業者の「工業で社会に貢献する」という志の元,戦時下において一瞬で全てが失われた日から今日に至るまで,我々の奥底には幾つもの飽くなき挑戦をしてきた歴史が刻まれている。その思いをDNAとして受け継ぎ,今日までバトンを繋いでいただいた諸先輩方に感謝の意を表すると共に,今後もマツダの存在意義を示し,社会に貢献すべく,価値あるものづくりの力を高めていきたい。 さて,今年マツダでは,我々の存在意義をあらためて確認し,マツダが大切にしてきた価値観とマツダが解決に貢献できる社会課題を踏まえパーパス「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」を定めた。また,そのパーパス実現に向け,マツダの約束としてのプロミス「いきいきとする体験をお届けする」,実践するうえで大切にすべき振る舞いや価値観,行動様式としてのバリューズ「ひと中心」「飽くなき挑戦」「おもてなしの心」を定めた。これらをマツダの北極星とし,ここへ向かう一里塚として2030年に到達していたい姿を2030VISIONとして「�走る歓び�で移動体験の感動を量産するクルマ好きの会社になる」とした。この背景には,デジタル革新をはじめとして生活者の行動形態や価値観が大きく変化していること,地球温暖化による気候変動や資源・エネルギー問題,また,世界的な社会の分断など地球規模での重要課題が山積していることなど,我々自動車業界も変わらなければならない100年に一度の大変革期に突入し,先が見えない中で,もう一度自分たちの居場所を定義する必要性があったからに他ならない。 技術に関しても同じことが言える。これまでのように,単に技術の高さを目指すものづくりから,お客様に実体験を通じて感じていただきたい価値とは何か?そのためにはどんな技術が必要であるか?を考えなければ,社会に貢献しているとは言えなくなってきていると感じる。語弊を恐れずに言うのであれば,技術は手段であり,その先にある生活者への価値提供こそが重要である。技術革新の中で自動車が提供できる価値範囲は拡大した。単に移動をするだけのものではなく,自動車の内外と繋がることにより様々なことが提供可能となってくる。今後もその範囲は広がってくるであろう。よって,既知の自動車業界の枠に囚われない発想や技術連携をしていかなければならない。既存のバリューチェーンやサプライチェーンも変化し,同時に技術難易度は確実に上がり,世の中の様々な技術や機能が融合していき,これまでにない生活者の行動変化や更なる価値観変化を起こしていくのである。 この考え方を念頭に,マツダのものづくりは技術(シーズ)起点から価値提供(ニーズ)起点に舵を切っ執行役員佐賀 尚人巻頭言

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る