マツダ技報2023
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(2)パイロット生産での異常値 これらの対策を織り込み,36個のパイロット生産を行った結果,アンバランス量2416,2186,1532g・mmと,目標値を超過した異常値が3個発生した。現物を観取りしたところ,メタル挿入穴近傍に偏肉が認められ,寸法測定の結果,Fig. 15のようにNo.2中子がNo.1中子に対し最大1.0mm傾いたことが判明した。そこでこの状態を模擬してアンバランス解析した結果,実測値と一致したため,これを原因と特定した。工程内で中子の傾きの原因を調査したところ,組んだ鋳型を搬送する際の振動や衝撃で主型が浮き,ずれた中子に浮いた鋳型が載ったときに同現象が発生することを突き止め,その対策として主型同士を接着することとした。より万全に対策するため,再度各工程を手順ごとにチェックし,漏れのないことを確認したうえで量産を迎えた。―82―domdnaS fl o il l owolFhsalf fepahSnoisnemd gnittes giJngised gnitsaCatemnetlom )eprup(Fig. 13 Improvement of Flash ShapeFig. 14 Improvement of Casting DesignFig. 15 Conceptual Diagram of Core Inclination7. 効果確認Previous model New model Vertex gate casting planCentergatecastingplanYellow: No.1 core Green: No.2 core 等の異物を噛み込み基準がずれた状態で加工すると,外郭の加工面と中空部の鋳肌面の相対的な寸法,つまり肉厚がばらつき,アンバランスが生じる。13B型では径方向の加工基準近傍に鋳型の位置決め形状が存在し,Fig. 13のように固定治具の周り止め形状と垂直に鋳バリが出ていた(鋳バリサイズは4倍以上に拡大して表現)。そこでバリ残り基準を定め,治具に逃がし形状を設けることで対応していたが,抜本対策として位置決め形状を改良して治具に水平な鋳バリに変え,根本的な対策と した。 また,機械加工時の基準ずれの管理値として±0.1mmを採用してずれ量を全数測定し,満足するワークのみ次の工程に送ることとした。6.6 追加対策(1)冷却速度ばらつき ローターは代々,量産性に優れる頂点ゲート方案を採用していたが,RX8に搭載された13B型RENESISローターでは,120°ごとの冷却速度が均一で密度ばらつきを抑制したセンターゲート方案(Fig. 14)を開発した。これにより密度ばらつきは極小化されたが,8C型ローターではこの方案を踏襲しつつ更に厳しい充填温度ばらつき基準±10℃に挑戦した。CAEで凝固解析し,湯道径や堰断面等の因子をチューニングし,基準を満足する鋳造方案を作りあげた。 量産を開始し651台の加工完了時点のアンバランス量の計測値をTable 3に示す。自主管理値1675g・mmに対してCpk1.43を確保しており,図面規格に対してCpk2.32とばらつきを極小化した鋳造工程を実現でき た。

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