マツダ技報2023
95/203

―87―Fig. 12 Plating Equipment ConfigurationFig. 13 Plating MechanismFig. 14 Simulation of Work Surface Flow Velocity また,この結果から数段積み重ねたワーク内のめっき液流量を調整する機構を設備仕様に織り込んだ。実機での検証では,9段積みされたワークの全てでねらいどおりのめっき膜厚150μmが析出されていることを確認できた。実際に循環流量を増やすほど膜厚差が少なくなることが確認でき,めっき析出反応で発生するガスを積極的に離脱させることがめっき析出の均一化に効果的であることが立証できた。8C型ローターハウジングめっき設備を以下に示す(Fig. 15)。Fig. 15 8C Plating Equipment3.4 めっき用電極のシミュレーション設計 ここまでの取り組みで,部位によるめっき析出速度の差を低減することが,めっき皮膜の品質確保に重要であることが分かった。そこで更なる品質改善のため,トロコイド面内のめっき析出速度均一化に取り組んだ。これまでの電極設計の考えを基にシミュレーション解析を行い,8C型ローターハウジングに対応した専用めっき電極の設計を行った(Fig. 16,17)。Fig. 16 Analytical Model Creation精度にめっき液中の触媒濃度を測定・管理できる方法を検討した結果,イオンクロマトグラフ法を採用し,ラインサイドに配備することとした。3.3 めっき液循環流量コントロール ローターハウジングめっき設備は下記Fig. 12に示す構造で,ローターハウジング生産開始時から基本構造は大きく変わっていない。1度でより多くのローターハウジングをめっき処理したいため,ワークを数枚積み重ねた状態でめっき設備に組付し,設備中央にセットされている電極とワークのわずかな隙間に下側からめっき液を送り込み上側から回収する仕組みの設備としている。めっき液を循環しながら通電することでクロムイオンを還元し,トロコイド面にクロムめっき皮膜を析出させる仕組みである。この時,電極表面(陽極側)からは酸素,ワーク表面(陰極側)からは水素ガスが大量に発生する(Fig. 13)。 発生したガスはめっき液と一緒に上側から回収されるが,ワークを高く積み重ねて過ぎた場合には,上部に積み込まれたワークと下部に積み込まれたワークで表面のガスの付着量が異なり,めっき膜厚とめっき構造に差が生じてしまう。めっき析出時に発生するガスをめっき液循環流により回収することで,めっき速度の差を低減し,めっき膜厚とめっき構造のバラツキが低減できると仮定し,CAEにより循環流量変化によるワーク表面の流れを検証(Fig. 14)し,ワークの同時処理数とめっき液循環流量を決定した。

元のページ  ../index.html#95

このブックを見る