マツダ技報2025
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テ2――マツダ技報No.41(2025) ChatGPTAIを使いさえすれば良い巻頭言が書ける,というSKYACTIV�調の活AIあるいは「どのように人間の感情に訴えかけるか」は最終的に人間の価値観と判断に委ねられます。振り返ってみると,産業革命以降の技術進化は,人間が自然を征服・支配し,それを�資源�と捉えて発展してきたように思います。しかし,もはやそのような価値観に基づいた進化が臨界点に達しつつあることは,地球や社会の様々な,ともすると解決不可能に思える課題や情勢等から,私たち自身が肌感覚として感じはじめています。 私は,このような状況に対して�日本的な精神性�が少なからず示唆を与えてくれる可能性があるのでは,と考えています。それは以下のように様々な側面で語ることができますが,いずれも世界に類を見ない独自性に満ちているように思います。・自然を畏敬の対象ととらえ,山,川,木をはじめあらゆるものに神が宿るとする自然崇拝の精神。・茶道,書道,武道などあらゆる活動に,肉体のみならず精神を含んだ自らのすべてをささげることで,自己を超越した高みや深遠に到達するという,結果よりも過程を重視する精神。・そして,これら自然崇拝や道具や人工物に対する捉え方から,神々が宿る自然や,魂が宿る道具とを調和させ共生していく,という�共生�・神に対する感性:一神教における神のような絶対的かつ全知全能な存在ではなく,自然や事物のすべてに宿る神々を尊重する精神性。自分の周囲のものすべてを大切にしていく精神につながります。・思いやり,慮る,おもてなし:集団の調和を重視するなかで,個人の利益や感情を調整し相手の気持ちに深く配慮して物事を進める�おもてなし�の文化に繋がっています。 現在,私たちが直面している多くの課題に,これら日本的な精神が,新たな示唆を授けてくれる可能性を感じるのは,私だけでしょうか?たな価値の創出�に対しても日本的な精神が新たな可能性に導いてくれるように思います。 私たちマツダは,魂動(こどう)デザイン,人馬一体フィロソフィー,人間中心の考え方,クノロジー,おもてなしの心,など独自の視点でクルマづくり・価値づくりに取り組んできました。それらには日本人ならではの価値観,そして広島ではぐくまれたチャレンジ精神が通底しています。勿論,マツダが地球規模の課題を直接解決する先頭に立つなどと妄言を展開するつもりはありません。しかし,少なくとも,私たちが大切にしてきた日本人としての価値観・精神と最新の技術が将来に亘って見事に�共生�和�する価値づくりや社会づくりを目指して日々弛まぬ努力を重ね深めていくこと,そしてそれを勇気をもって世界に語りかけ続けることには,少なからず価値があるのでは,と感じています。 ずいぶん妄想と大風呂敷を広げてしまいました。生成訳ではないことがご理解いただけたと思います。さて,翻ってマツダ技報本号ですが,まさに生成用に挑戦する寄稿も見受けられますし,それ以外の技術の進化に日々取り組む仲間たちの研究の成果が掲載されています。これらの事例が,近未来の私たちの生活をどのように豊かにするのか,そして社会にどのように貢献していくのか,人間はこれらの技術が進化した姿とどう付き合っていくのか,そして取り組んだ本人たち自身がその研究過程においてどのように成長を楽しむことができたのか・・などと少しだけ思いを馳せながら,皆さんと一緒に読み進んでいきたいと思います。�調和�の精神。議論を冒頭に戻して,が提起した�これまでの常識を超える新

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