212’)1T――マツダ技報No.41(2025) 2点の理由から1)(法2. 従来の金型機械加工時間見積もりと課題3. KODO Designつの金型で計画との乖s Die Production FlowFig. 1にマツダのプレス金型製作フローを示す。①金Fig. 2 型設計と並行して製作計画を策定し,②製作工程設計,NCデータ(工作機械の動作制御命令)作成,素材・部品調達等の製作準備を経て,③工作機械を用いて素材を設計形状に機械加工する。その後,④手仕上げと部品組付けにより金型を完成させ,最後に⑤プレス機によるパネル成形トライアルを通して調整を行い,量産ラインに引き渡す。 この中で,特に③機械加工は金型製作の上流工程かつ製作全体工数の大部分を占めるため,計画と実績の乖離が発生した場合,金型製作全体へ与える影響が大きい。また,個々の能力が異なる工作機械を駆使して複数の金型を同時並行で加工するため,離が生じると,効率的な工作機械の使い切りができなくなり,全金型を通しての大幅な製作タイムロスにつながってしまう。 更に,製作準備に万全を期すためには,可能な限り早期段階で各金型の工作機械割り付けや機械占有時間を検討し,製作負荷の見通しを立てることが重要である。そのため,理想的には,金型設計初期段階で高精度に機械加工時間を見積もり,計画を策定できる状態が望ましい。本稿では,この理想状態の実現に向けた取り組み事例について紹介する。Fig. 2Mazda 従来,新規製作する金型の機械加工時間は,過去に製作した類似金型の実績を基に,構造差等の影響を人が勘案して大まかに見積もっている。しかし,この方式は金型製作の複雑かつ暗黙的な知見を要することから,以下2点の問題を抱えている。)見積もりの難易度や担当者の熟練度に依存して,最60大で約%にも達する見積もり誤差や見積もり所要時間の増大が生じる。特に,金型設計初期段階では,MAPEを採用した。新規金型機械加工時間予測手法開発金型構造の詳細が未確定であり,得られる情報が限られるため,熟練者であっても高精度な見積もりを安定して行うことは難しい。その結果,金型製作進行中に計画の練り直しが頻発し,全体の製作効率に悪影響を及ぼす。)業務が属人化しており,ノウハウの伝達が難しい。担当者の転属等によるノウハウの消失や後継者の育成が難航する懸念がある。また,将来的な労働人口の減少に伴い,業務の属人化は業務停滞のリスクを高めている。これはマツダのみならず,金型業界全体にわたって存在する差し迫った問題である。 これらの問題により,信頼性の高い機械加工計画策定プロセスが確立できず,金型製作効率の低下を招いている。 計画策定の属人化を解消する事例として,機械学習等を用いて金型加工時間を機械的に予測する技術は存在するが,既存のものは金型構造詳細情報の利用を前提とする場合や,予測精度を十分に高めるために多量の学習データが必要となる場合等,さまざまな障壁が存在するため適用できていなかった。 以上のことから,適用性の高い手段を用いて,金型設計初期段階で人的リソースに依存せず機械加工時間を迅速かつ高精度に予測することが課題となる。3.1 目的と方法 本取り組みでは,計画プロセスを理想状態に変革することを目的とした。なお,目標とする予測精度は,実務適用性を考慮して,計画策定時にあらかじめ用意しておくバッファ以内で乖離のリカバリーが可能となる平均絶対誤差率(20%以内とした。 プレス金型製作は,量産の成形工程順序に従い,製品デザイン形状の成形を担う「ドロー型」,不要部の切断を担う「トリム型」,折り曲げ部の加工を担う「ベンド型」の順に進行する。本稿では,このうち最も内製率が高く,かつ最初に製作する(優先順位が高い)ため計画策定上特に重要性の高い「ドロー型」を対象とした事例を紹介する。 製作する金型の構造体は主に,プレス機上面に設置される「上型」,プレス機下面に設置される「下型」に分かれて構成されている(能の違いから,基本構造が異なっており,それぞれの機械加工は独立して実施するため,両者を切り分けて検討を行った。 機械加工時間予測の手段として,以下多変量回帰分析手法の一種である両側1)金型は一品一様の製品であり,期間あたりの製作数が少ないため蓄積できるデータ数が限られている。そ186章で述べた課題を達成し,従来のFig. 3)。これらは,求められる機
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