マツダ技報2025
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:Evaluation of human exposure to whole-body V21—点2――マツダ技報No.41(2025) 3. これからの開発プロセスMBDで“広く”機械性能(車の機械としてCAE化に向けて,これらテストモード全てをMBDMAP化し,近い入力レベルのグルーMAPISO2631-1今までの開発プロセスホイールの間にある前輪周りのシステムだけでなく,後輪のサスペンションやタイヤ特性が大きく関わる。 この難易度が高い操縦安定性・乗心地領域においてMBDを実現するために,マツダは“ひと”と“機械”を切り分けた上で,“機械”に注力する方針で取り組んだ。MBD具体的には,機械特性をな限り数値で性能を作り込み,実車段階では,後述する匠が,ひとの感覚を活かしてねらいの性能に仕上げる。機械のに注力する理由は,“ひと”が深く関連するMBD操縦安定性・乗心地領域においても“機械”の重要性は変わらないと考えたからである。本稿では,操縦安定性・乗心地の開発環境の構築と,量産開発への適MBD用結果について報告する。2.  自動車の開発プロセスにおいて「であるが,操縦安定性・乗心地開発の特徴は,「匠による作り込み」という工程が存在することである(具体的には,実車による性能作り込みのプロである匠が,彼らの感性を駆使し,部品変更によって商品としての性能を目標に仕上げる作業である。Fig. 1V-Development Process これまでの操縦安定性・乗心地開発プロセスは,「匠による作り込み」を軸に,性能を作り込む開発に時間をかけていた。具体的には,左バンクの解析結果を活用しつつも,右バンクで匠自身の感性を基に仕様を決めていくやり方である。 このようなプロセスでは,「開発効率」の問題があった。「開発効率」における問題はバンクでの性能改善は,先述のように設計制約が多い上に,実車を扱うため多くのテスト時間を費やすため,開発工数あたりの性能改善効果が小さいことである。目は,右バンクでの性能改善は,官能評価主体の開発であるため,性能改善効果の定量管理が難しく,費用対効果に基づいた工数管理ができないことである。 このような開発になっていた原因は,操縦安定性・乗心地現象が複雑であるため,左バンクでの性能設計の対象を一部のテストモードに頼らざるを得なかったからでに織り込むことで,可能字開発」は一般的点ある。点目は,右ある。言い換えると「狭く深く」開発をしていたと言える。3.1 目指す開発プロセス マツダらしい性能を,効率よく達成するためには,「広く深く」開発することが課題ととらえた。課題達成のコンセプトは「の能力)を確保した上で,感性領域を匠の力で“深く”作り込む」こととした。具体的には,まずとができる数値化された機械システムに対して機能配分(各性能目標を満足させるために,各システムの設計パラメーター値を調整する行為)を行うことで,機械性能を確保する。その後,機械性能が確保された実車を用いて,匠はモデルでの表現が難しいひと領域の作り込みに専念するプロセスである。つまり,れの強みを最大限発揮できるプロセスへと変革する。Fig. 1)。 操縦安定性・乗心地領域においてめのポイントは,実現象を表現するためにモデル(テストモード,設計パラメーター)を複雑化するのではなく,実現象のエッセンスを抽出したシンプルなモデルで表現することである。なぜなら,解析結果の解釈が容易となり,右バンクにおいても解析結果と感性のつながりがイメージしやすくなるからである。3.2 テストモードの一般化 操縦安定性や乗心地評価はさまざまなテスト条件(路面,車速,操舵速度など)を網羅したテストモードで評価しなくてはならない。しかしテスト条件の組み合わせは無数にあるため,テストモードも無数にある。開発プロセスの開発初期から検討対象とするのも一つの手であるが,計算コストや結果の解釈性などの点から機能配分のプロセスに織り込むことは難しい。そこで,代表的なテストモードのテスト条件を定量的につ網羅的なテストモードを再構築した。例えば乗心地の場合,代表的な実走テストモードにおけるサスペンションへの入力レベルをプごとに一般化した加振波形による台上テストを用いたシンプルな加振テストモードを作成した(性能指標については,「and shockvibration Part 1: General requirementsる周波数,振動の方向や評価部位ごとの人体感度を活用することで,テスト条件同様にシンプルかつ網羅的な指標にした。51が扱うこCAE担当者と匠,それぞMBDを活用するた化し,シンプルかFig. 2)。またMechanical vibration 」で規定されてい

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