極86’――マツダ技報No.41(2025) 2. モーターノイズ概要2.2 モーターノイズ評価手法 モーターノイズの予測モデルを構築する上で,モーターから生じる磁束の把握が重要となる。そこで,ステーターのティース先端部へサーチコイルを貼り付け,エアギャップ間に生じる磁束の直接計測を行った。サーチコイルとは,優れたポリイミド樹脂のシート中にコイルを巻き,磁束がコイルを通過した際の誘起電圧を計測することで,ファラデーの電磁誘導則より磁束を導出できる。 そのサーチコイルを貼り付けたモーターを上試験装置へ搭載し,汎用インバーターより任意の電流48でモーターを駆動できる状態にした。モーターはスロットの分布巻きタイプを選択し,筐体へ振動加速度ピックアップを貼り付け,同時に振動計測も実施している。モーターノイズを構成する各物理値である,電流,PT/車両磁束,振動を同時計測できる試験装置を構築し,振動まで伝わっていく過程で,どこに予測とのズレが生じるか判別可能とした。Fig. 381よるプロセス革新を進めており,これまでモーターノイズ予測の構築に取り組んできた。モーターノイズを精度よく予測するためには,モーターの磁気特性と,モーターへ入力されるインバーター電流の高調波成分も考慮して予測を行う必要がある。よって,本稿ではモーター磁気回路モデルと,インバーターモデルを構築し,それぞれのモデルを連成させて解くことで,電流と磁束が相互に影響を及ぼし合うモーター・インバーターの連成解析モデルを構築してきた。これにより高調波を含む電流,及び磁束の予測を可能にし,モーターノイズの予測精度を向上させてきたので,その取り組みについて紹介する。2.1 モーターノイズについて モーターノイズとは,モーターで発生する電磁力が起振力となり,モーター筐体からの直接放射や,の構造伝達系を伝って,車室内で認知される中高周波の音である。この電磁力は,とステーターのエアギャップ間で生じるマクスウェル応力の式によって表現でき,モーター通電時に生じる磁束の予測が重要となる。特に,三相交流のは,に示すように,電気角Fig. 2磁力が発生するため,電流・磁束の高次成分を含めて正確に予測する必要がある。Fig. 1Fig. 2Order of Electromagnetic Forceに示すようにローターFig. 1モーターでIPM次を主成分とする電Maxwells Equationsに示すように,絶縁性・耐熱性にFig. 3Principle of Magnetic Flux Measurementの台Fig. 4
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